5月11日に高崎でカムフロムアウェイを見てきました。昼公演。
告知が出たときは「ミュージカル俳優をお題に山手線ゲームした結果みたいなキャスティング」と驚き、見たい人が多すぎるから公演までに修行して目を増やしたい〜と言って楽しみにしていました。
高崎芸術劇場の大劇場は、明るく広いロビーに観やすい客席と素敵な場所でした。
観劇までの紆余曲折
ミュージカル『カムフロムアウェイ』観劇者の麻しん感染の報告と注意喚起について|【公式】ホリプロステージ|チケット情報・販売・購入・予約
もともと東京公演のチケットを取っていたものの、そのチケットの日付の数週間後に大きな病院で半日がかりの処置を受けることが決まっていたため悩みに悩んで断念しました。
その時点では諸々が確定していなかったものの、体調を崩したら処置予定が延期になるのが確定している状況。症状が出なくとも院内には基礎疾患がある方や妊婦さんがいると考えて踏み切れなかった。
免疫についてはワクチンの特例措置が出た世代で、2回接種していたかをすぐ特定できず。
年齢でみる不足している可能性があるワクチン(キャッチアップスケジュール) こどもとおとなのワクチンサイト
そして断腸の思いで出したリセールが成立した日に、その数時間後に出た公式からの発表。悔しかった。とはいえ当時は潜伏期間も終わり切っていなかったから、公式発表が出ていたとしても余計に悩むだけの結果になっていたとは思う。
後日ワクチンを2回打っていることを確認してから駆けつけた東京前楽の当日券チャレンジも取れなかった! 写真だけ撮った。
降り出していた小雨に濡れて帰ろうとしていたとき駅まで傘に入れてくださったお姉さん、ありがとうございました。キングアーサーの話ができて楽しかったです。ツアー公演に行こうと行動できたのは、配信がない旨の告知があったことと感想を聞けたおかげです。無事に観ることができました。
私も自分の健康上の問題が迫っていなければ取っていたチケットでそのまま観る選択をしていたと思うので、初日以降に悩んだだろう人々の選択に思うところはありません。(あくまで日常生活には影響なく過ごしていて、人に話すときにも毎回そこは強調しているのでニックが薬の説明で口数が多くなっているのに共感。)
やっぱりアフタートークも見たかった。今後このようなことは起きてほしくないし、万一同様の事情が発生した場合には公式からの素早い情報公開を望みます。
感想
会場内のパネルで背景を確認できました。
着席後は予習に最適と目にしていた「おけぴ観劇会の相関図」も見たものの、これが難しい。ついていけるか不安なまま幕が上がりました。
https://okepi.net/chirashidata/cfa_ura_20240316.pdf
ついていけたかどうか、結論としてはばっちり大丈夫でした。
役ごとに本格的な衣装替えは難しかった中、ジャケットや帽子などの小物を駆使して見た目に区別がつくようにしてくれていたので。学生演劇や小劇団の作品で、明確な変化がない兼ね役に翻弄されていたのでありがたかった。
ただ9.11当時を覚えていない(物心はついていたはずの年齢だったものの、当時は普通に日常生活を送っていたよう)のでリアルタイムの記憶があれば受け止め方がまた違っただろうと歯痒さはありました。あとは携帯電話が普及していなかった頃の質感も。今改めて背景を知ることができてよかったと思っています。
微笑ましいところだと、ヘラジカ待ちの時間が好き。
またニューファンドランドで背景の違う人々が分かり合ってゆく様子に、自然と連想したのが2021年の舞台「Oslo」でした。オスロ合意の前にイスラエルとパレスチナ、ノルウェーの代表者による会談が行われていた事実を元に作られた作品。カムフロムアウェイ出演者の中では安蘭けいさんが出ていました。
対立していた彼らがオスロで会議を重ねる間に食卓も囲んで少しずつ壁をなくした様子と、ニューファンドランドのBBQで人々が打ち解けていた姿が重なりました。
当時Osloが好きだったからこそこれは(ストレートプレイではなく)ミュージカルで観たかった!と悔しかったので、今回そこが部分的に報われた思いです。
Osloとも少し関係するところだと、宗教の重みを実感。言葉が通じない乗客を励まそうと咄嗟に聖書の番号を見てページを指して「明日を思い煩うことなかれ」を伝えた場面で宗教が言語を超えて人をつなぐ手段であることを実感したし、自分自身にもそのメッセージが胸に沁みました。
先日キリスト教の学校に通っていた友人に会ったのでこのエピソードを話してキリスト教に親しんでいる人々は皆当たり前に同じことができるのかと聞いてみたら、彼女はもう各章節レベルでは覚えていないけども十分に想像できるとのことだった。
あとは特殊な戒律のもとで作られた食事しかとらないという男性の話。自分の宗教に対しての捉え方が日常生活の範囲に留まっていたので、緊急事態であっても自身が生きることより戒律を優先する姿で信仰の重さを突きつけられました。
一方でガンダーにはユダヤのルーツを隠して壮年まで過ごしていた人もいて、彼がそれを打ち明けて黒い帽子をかぶった時の笑顔にぐっときました。(そしてこの場面に出ていたのが吉原光夫さんでしたが、なんと観ていた間ずっと伊礼彼方さんと勘違いしていた!オーラがすごいな〜と思っていた。すみません、今回しっかり覚えました。)
あとはラスト近くに後日談が語られたところでもOsloを思い出した。実話を元にした舞台では定番の構成なのかも。
ハンナが息子を喪い、ケビンふたりは非日常でわかり合えずとどうにもならなかったことはあった上で、最後はたしかに前向きだった。
無事に産まれたボノボの子に付けられた名前が「ガンダー」だったところで涙ぐみました。
ここからはキャストさんの感想。特に目で追っていたのがいわゆるキングアーサー組とシルビア・グラブさんなので5人を中心に見出しを立てましたが、流れで他の方にも触れています。
安蘭けいさん
いつもの安蘭けいさんの魅力をしっかり堪能できて、さらにハッピーエンドで嬉しかった!彼女がはっきりと幸せそうな姿は作中でなかなか見られない印象があったので。
浦井さんと石川さんとのコーラスがそれぞれ良かったなあ。キングアーサーの思い出も込みかもしれないけど、やっぱりそれ以上に純粋に歌が好きです。
石川禅さん
最初こそ「マーリンの声なのに普通のおじさんだ!」と動揺したものの、途中からちゃんとニックとダグに見えるようになった。
ニックが劇中で最初にカメラを向けていたあたりの席だったので、写ったかどうか気になる。各公演のとうこさん写真だけでも公開してください!
浦井健治さん(・田代万里生さん)
今まで浦井さんのことを若々しく見える人だと思っていたのが、若く「も」見せられる人なんだと実感。劇中で何度か客席に視線を向けて語ってくれていて、一度目線が合った気がして嬉しかった。
浦井さんとWケビンだった田代万里生さん。「エリザベート」でのフランツ役から王子や貴族のイメージが強く、無愛想というかワイルドな姿が全く結びつかなかった。驚きました。
マタ・ハリのキャストにラドゥー役で名を連ねていたときはその姿が想像できず(和樹さんラドゥーの回で)観てからも田代さんってアルマン役じゃないんだな?と思ったけど、今なら想像できる。また違う役でも観てみたいです。
和樹さんがメインで演じていたボブも微笑ましかったけど、いちばん素敵だと思ったのはグレーのジャケットを羽織って険しい顔をしていた場面です。あれはどの役だったんだろう、いち乗客?
なんだかんだきりりとした姿(のほう)が好みなので、白衣や機長の姿が印象深い。
そして機長といえばやっぱり外せないのが濱田めぐみさん。観劇直後のメモに「機長、機長〜〜!」というのが残っていた、この作品は「機長がかっこよかった」がダブルミーニングになってどちらの意味でも正しいのが凄い。
「愛する飛行機がこんな風に(テロに)使われた」(※ニュアンス)での苦しげな表情が胸に刺さって、9.11をその目線で捉えたことが全くなかったのにも気付いてショックだった。
シルビア・グラブさん(・咲妃みゆさん)
動物愛護協会長のボニーから目が離せなかった。今回のキャスト陣および役から最もときめいた人を1人選ぶとなったら、苦渋もありつつ迷いなく彼女を挙げたい。
シルビアさんをコインロッカー・ベイビーズで観たときの品があって儚くも芯が強そうなイメージ自体は、観劇前にあった「加藤和樹の深ボリRADIO!!」ゲスト回でプライベートの趣味やルーティンに関する質問にひたすら「酒!」と答えていた姿に一旦揺らいでいたんだけども。
髪をひとつにまとめた動きやすさ重視の服装と、「〜してやって」が「〜したって」になっているようなラフな口調にセクシーさがにじみ出ていた。
そしてボニーが動物へ語りかけていたときの犬や猫の鳴き声、音響で流しているのかと思っていたらラスト近くに動物たちと別れるシーンで咲妃みゆさんが少し離れた舞台の上手側に座って声をあてているのを発見。びっくりした!気付いたとき双眼鏡で口元を確認してしまった。
リアルな鳴き声に、可憐なうえに多芸な方だとは〜と感嘆しました。
公演後は、ガンダーの名誉市民になりたい想いを込めて能登半島地震へのチャリティステッカーを購入。
熊本公演限定だったくまモンのチャリティステッカーもポスターだけ出ていて、SNSでも画像を見ていたけどやっぱり可愛かった。
そちらも置かれていたら両方買っていたと思うので、今後はぜひご検討ください。
改めて、最終日までの全公演が無事に終わったことを本当に嬉しく思います。
高崎でのごはん 登利平さん
帰りは登利平(とりへい)さんで鳥松重をいただきました。2023年2月に「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」で見た記憶を頼りに検索して見つけたお店。美味しかった〜。
出演者さんの過去作の観劇歴と感想
公式HPのキャスト記載順に、過去に劇場で観たことがある作品を挙げてみました。
感想を書いていた作品にはリンクを貼っています。
(いちおう今回のキャスト陣を「アベンジャーズ」とは表現しないようにしている。元々加藤和樹さんが取材で言っていたけど、以前マーベルのファンが「アベンジャーズの本来の意味は『復讐者たち』なのに、最強メンバーの集結を指す言葉になって納得がいかない」と憤慨していたので。それ以来、なんとなく気をつけようという程度。)
安蘭けいさん:ハル、Oslo 、蜘蛛女のキス、Next to Normal、 キングアーサー
加藤和樹さん:マタ・ハリ2019、BACKBEAT2019/2023、キングアーサー、ファントム2023、西遊記
田代万里生さん:エリザベート2019
森公美子さん:ABC座2020
柚希礼音さん:マタ・ハリ2019、COLOR、FACTORY GIRLS
吉原光夫さん:マリー・アントワネット2019