震えてるのは君のほう

You’re Dream Maker.

ミュージカル「ハル」感想

4月6日にミュージカル「ハル」を観てきました。

もともと栗山民也さんの演出する舞台を何度か観ていて、さらに薮宏太さんと七五三掛龍也さんはそれぞれの所属グループの気になる存在だったので。

桜と赤坂ACTシアター。綺麗だった。

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グローブを提げた主人公の旅立ちを感じさせるキービジュアルから、自立がテーマの爽やかな青春ものを想像していたら相当重い話だった。

最初の「ハル……ハル……」って音楽で、これは癖が強いぞ、と覚悟しました。脚本の癖と多すぎるテーマについていけなかったというのが正直な気持ち。

話のテーマが多い上に、シンプルに登場人物が多い!これまでに観た舞台で一、二を争うくらい舞台上の役者さんが多かった。

1幕は爽やかな印象だったけど、後半どんどん混沌を極めてしまった印象。個人的には主人公と彼の友人と家族の成長、くらいでちょうどよかった気がします。

「閉塞感から脱却しようと足掻く大人たち」と「町の復興」が置いてきぼりになって全体的に中途半端に見えてしまったような。特にサンドバックちゃんと落ちこぼれ先生、派遣切りのあたり妙に生々しくてしんどかった。

あと敗走するハルを携帯で撮っていた町の大人たち、結局人の痛みに鈍感なままなのでは。

でも皆ここから、スポーツに限らずそれぞれの夢中になれるものを見つけられたらいいな。(前向きになれるものってスポーツだけじゃないはず、というインドア派の主張)

 

役者さんについて。

薮宏太さんはとにかく声量がすごかった。歌が上手い!顔が小さい!スタイルがいい!

七五三掛さんとの廃墟でのぶつかり合いが印象的で、「マリー・アントワネット」のマリーとマルグリットが本気で言い争うシーンを連想した。

欲を言えばしめちゃんのソロの歌をもっとしっかり聞きたかったな。二人とも本当に高校生に見えました。

北乃きいちゃんは、こちらも廃墟でのシーンが彼女のアヴァンギャルド性が全開って感じで格好良かったです。

(マユの役のイメージはPDキュートのアバ強めっぽいな、北乃きいさんは真っ白のTシャツにラベンダー?くすみピンク?を羽織れてるからパーソナルカラーはきっとブルベ夏。でもはっきりした色も似合いそう〜、とか考えてた)

彼女の登場からの突然のアンダーグラウンド感にはものすごくびっくりした。そのあと試合の直前に突然のよさこい?が始まった場面もびっくりしたけど。

 

あの廃墟での前衛的なダンスは「用が済んだら(=心臓が移植されたら)捨てられる」ことを示す伏線だった?たしかに粗大ごみを率いる様子に人ならざる感じはあった。

彼女の正体が主人公に移植された心臓の持ち主、つまり幽霊とは全く予想できなかった。試合の直後はここからどう終わらせるのかと不安になっていたくらい。

改めて思い返すとたしかにマユと他の登場人物の会話はなかったけど、触れられる幽霊なんている!?!?って気持ちがどうしても先に立ってしまう。

 

ただハルに正体を明かしてからのマユは吹っ切れたような清々しさがあって、堂々としていて素敵でした。歌声がディズニープリンセスみたいだった。

母親役の安蘭けいさんも、地味な服装をものともしないオーラがありました。ハルが試合に出ることを母親に伝えたとき、手を掴んでくるくる回ってた場面が好きだった。

高校生男子が実際に母親とくるくる回るかどうかはわからないけど(たぶんしない)全体的にどの登場人物も笑顔が少なかった中で、貴重な明るいシーンだった。

あと好きな場面はハルと祖母の会話。自分もしたいことをしているだろうか、好きなことを追って駆け抜けていつのまにかおばあちゃんになる人生にしたい…と考え込んでしまった。

それとマユの父親が最後に頼んだこと、泣きました。何度か泣きそうになったところはあったけど、ここで本格的に涙が出た。

心臓移植がテーマのひとつなだけあって1幕から心臓の音が何度か使われていたけど、去年同じ赤坂ACTシアターで観た「コインロッカー・ベイビーズ」も心音が重要なモチーフだったので(主人公が受けた精神治療で使われた音)それを連想した補正もあったかもしれない。

生演奏だったところも当時と同じだったけど、今回はステージ裏じゃなくて前でやってたので指揮者さんと演奏を見る楽しさもありました。

 

前半こそ見終えてからのモヤモヤを文章にしていたけど、こうして書くうちに好きだった部分もたくさん浮かんでよかった!

これから薮さんと七五三掛さん、北乃きいさんや安蘭けいさんを意識して見てみようと思います。

また臓器移植について移植者に提供者の情報は知らされない(プライバシー保護のため)という知識があって作中の描写にフィクションとはいえ違和感を持ったものの、調べてみて「移植コーディネーターは移植者の経過報告や感謝の手紙を仲介できる」と知ることができました。

臓器提供後のドナー家族への支援|日本臓器移植ネットワーク

 

今回いわゆる「ジャニーズの外部舞台」として見たとき、大御所演出家による(アドリブや内輪受けの台詞もない)シリアスな題材だからと「良い仕事、良い舞台」に違いないと期待していた自分への反省はあります。

良いと思った部分は、決してそれらの条件で構成されていたわけではないので。上に挙げた要素を持たなかった舞台にも、大好きな作品はあります。

何事にも自分の心が動くかどうか、それこそ命が歌い出したい気持ちになっているか、を大切にしたい。そう感じました。