震えてるのは君のほう

You’re Dream Maker.

「キングアーサー」2/25夜と配信の感想

兵庫県立芸術文化センターでミュージカル「キングアーサー」二度目を観ました。2/25の夜公演です。加藤メレアガン・太田ランスロット・小南グィネヴィア回。

劇場の近くにショッピングセンター等もあったんだけど、開場1時間前くらいに着いてどこかお店に入って時間をつぶそうとしたらどこも埋まっていました。また関西遠征する機会があれば、2〜3時間の余裕を持って行ってみます。

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新国立劇場では休憩中のロビーに列ができていて近付けなかったキャストボードも、今回は写真を撮れました。複数回来ている人たちの割合が高くて余裕があったのかも。

 

2回目で「モルガンとメレアガンがすごく好きだった」から作品「キングアーサー」が好き、の気持ちになった気がします。

モルガンとメレアガンが刺さったって気持ちを「憑き物」と呼ぶのもどうかと思うけど、愛とは欲望の暴走でもあり愚かなものなので。

比較的全体を観られて、新しい発見もあり楽しかったです。ガヴェインこんなにずっと活躍してたんだ!と気付いたり、二幕最初にモルガンのいる空間がマーメイドラグーンみたいな雰囲気で素敵、と思ったり。あの珊瑚のような舞台装置、後でグィネヴィアの拘束にも使われていたけど。

 

初回の感想を順不同で引用しつつ、改めて思ったことなど感想を書きます。

今回のキングアーサー観劇で最終的に一番印象に残ったのは後から知った「浦井健治さんが41歳だった」ことかもしれない。

実年齢を知ってもなお若々しく見える浦井さん。未だに全然信じられません。この年の取らなさは歌手のYUKIちゃんに通じるところがありますね。

「Color」で幼児のような心から生き直していた姿とはまた別の形で、作中通して成長する姿を見られました。「アルジャーノンに花束を」も観たいです。

あとアーサー何回かすごい早口なところがあるな。マーリンとの会話とか。初回は全体の情報量を追うのに精一杯だったから受け入れていたけど、改めて観たら早い早い!と思った。尺の都合でそうなったのか、演出での早口だったのか。

 

ケイのことを(鬼滅の刃の)善逸みたいだな〜と微笑ましく見ていたけど、アーサーと血が繋がっていないことがわかっても彼を家族だと言い切った姿にはぐっときました。

観直してみたらこの場面、わりと王城に留まりたさで言っているように見えた。とはいえ、なんだかんだ保身なだけではないと思えるのが彼の人間味と愛嬌によるところですね。

 

グィネヴィアがアーサーとランスロットの間で思い悩む場面では「マドモアゼル・モーツァルト」を思い出しました。コンスタンツェがモーツァルトとの心の距離に悩み、フランツに惹かれていったあの感じ。

なんか二度目を観てわかった、元々グィネヴィアがランスロットへ心動いた理由を「アーサーが(王の重圧や呪いに)ひとり思い悩んでいたから」だと思っていたけど、3人での歌でアーサーが「誓い」と「約束」をたびたび口にしていたところからするともう彼女にとってアーサーはメレアガンと同様の義務の象徴になってしまっているんだな(と、観劇直後のメモに書いてありました。ここだけ一文が長いし文体も口語すぎるものの、せっかくなのでそのまま残します。)

1回目を平間さん宮澤さん、2回目は太田さん小南さんで観たらランスロットとグィネヴィアまわりの体感がかなり違いました。2回目の方が、2人とも自分の意思を貫いていると感じられて清々しかった。小南さんが健康的に胸元を開けているからかもしれない。

相対的に、平間さんと宮澤さんには周囲に翻弄される薄幸の美しさを感じました。例えるなら「容疑者Xの献身」の石神と靖子のような。

平間さんの歌が好きだなあと思ったので、「ダ・ポンテ 〜モーツァルトの影に隠れたもう一人の天才〜」のチケットも取っています。

 

ステージ左右の壁にも映像を映していて、星空や土煙を映していたときに空間が広く感じられてよかったです。そしてマーリンが鳥になって飛び立つ場面での使われ方がこの演出の本領発揮!と感じました。

兵庫県立芸術文化センターではステージ上でのみ映像を投影していたので、新国立劇場中劇場の後だとスケール感が物足りないかな?と少し不安でしたが(アーサーの目線、そのままか!)の違和感が勝った覚えがあります。そりゃあ客席に背中を向けるわけにもいかないけども。

そして二度目に観たとき、マーリンを見送ったアーサーが歌うのが「魔法に導かれて」のリプライズと気付いて切なかったです。かつてグィネヴィアに向いていた想いが国と民に捧げられていて、もうアーサーの心は明確に個人ではなく王としてあるんだと実感しました。

ただ彼が最後の最後に独り身の王となったのは、後々に後継で揉めたり新たな悲劇を生むんじゃないかと思わなくもない。このあたりはアーサー王物語をちゃんと読むとわかることなのかな。

 

休憩中に見た舞台写真のラインナップの中にもあって期待していた安蘭けい様と加藤和樹さんのシーン、本当に、本当によかった……。黒と紫を基調としたビジュアルもおふたりの声量も「復讐心に燃え手を組む2人と見せかけて強かな女(安蘭けい様)に利用される男(加藤和樹さん)」というシチュエーションも何もかも。双眼鏡でじっくり観たいのにどちらを視界に入れるか全然選べなかった。

特に1幕の終わりで2人が舞台の両端からアーサーらを見下ろしている場面は、席が二度ともセンブロ中央寄りだったのもあって視線を向ける先に迷いました。

昔どこかで聞いた「繋がれたヤギは行動範囲の端と端にえさを置かれると迷ってどちらにも行けず衰弱する」って話のヤギの気持ちがわかったくらい。最終的に舞台の中央も含めて少しずつ観ました。

これが黒を着るために生まれてきた人か〜と思います。もしかして生まれた時から黒着てましたか?

「復讐の約束」(ダンダリの前にある2人の歌)では、この世の美のひとつの完成がここにある……のような気持ちになっていました。柔らかな茶髪の似合う浦井さんのような別種の美しさもあるのであくまで数ある美しさの形のひとつという位置付けです。

安蘭けいさんが低い方のパートを担当する歌も、紫のライトで照らされたメレアガンの虚をつかれたような無垢の表情も好きで。(後ろの模様がロールシャッハテストみたいだな、とも思う。)

観劇後しばらくは都合がつかず、東京楽は完売だった中で遠征してのリピートに踏み切った動機にはモルガンとメレアガンの存在が大きかったです。稽古場動画を見返しながら地に足がつかない生活を送っていたので。

改めて何の映画だったのか調べたら「仮面ライダーカブト GOD SPEED LOVE」でした。

お風呂でよく再生していたのは製作発表の歌唱部分です。本編後に見直すと「魔法に導かれて」の最後に出てくる面々が全員わかって熱いんだ!

【チケット絶賛販売中】ミュージカル『キングアーサー』プレイベント(製作発表)アーカイブ配信中 - YouTube

この流れで、加藤さんと伊礼さんがそれぞれの役で歌っている北斗の拳ミュージカル初演の製作発表も貼らせてください。おすすめです。

【動画】ミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』歌唱披露 2021.10.28 - YouTube

配信で伊礼メレアガンも観ました。声に、特に台詞の発声に厚みがあって重々しかったのが印象的です。劇場版アニメの大御所声優さんの言う台詞みたいだと思った。

そして伊礼さんは全然笑わない!ずっと険しい顔をしていて、想像していた以上に違った角度での演じ方でした。

 

個人的には、加藤メレアガンの「どうしようもない外部要因とエゴが半々ずつくらいに混ざり合って暴走していた」ような感じが好みです。そういえば河合郁人さんのファンになったきっかけの舞台「コインロッカー・ベイビーズ」でもハシを演じた彼の演技が同じように感じられたな、と意外な角度から自分の業を知りました。

この流れで他作品の話をすると、作品全体のテーマに「阿呆浪士」と通ずるところがあったと感じます。

商人でありながら拾った血判状赤穂浪士になりすました男と、かつて赤穂浪士であった男の話。観た場所も同じ新国立劇場の中劇場でした。

マーリンがグィネヴィアに言った「心の声に従う勇気は、一度出せば十分です」の台詞でそう思ってから、アーサーを筆頭に作中で度々口にされる「運命」に関連する言葉が被って聞こえました。

 

改めて、本当にこのまま2023年のマイベストになるんじゃないかと思うほどに好きな作品です。キャストスタッフ関係者の皆様、ありがとうございました!

モルガンの「魂の崩壊さえも恐れないか!」という台詞に(さすがに魂の崩壊は辞すな〜)と思っていたけど、この数ヶ月で魂の形がちょっと変わったんじゃないかというくらいには影響を受けた気がしています。

加藤さんと東山さん、工藤さんが出演するBACKBEATも楽しみです♡