震えてるのは君のほう

You’re Dream Maker.

2024「朝彦と夜彦1987」A感想(平野良さん・村田充さん)

1月13日、今年の観劇始めに朗読劇「朝彦と夜彦1987」を観てきました。今作は初見で、中屋敷法仁さんの演出作品には何度か触れています。

Aのおふたりで見たくて、急な予定変更のおかげで彼らのラスト回に滑り込めました。「信長未満(ドラマ)」と「HELI-X 〜スパイラル・ラビリンス〜」以来の平野良さん。村田充さんはお名前だけ存じていて、見るのは今回初めてでした。

以下本編の内容に触れた感想です。

f:id:senyaitiya:20240115212952j:image

夜彦が生きていてよかった!クライマックスまでの流れを経て、夜彦の30歳を祝えるハッピーエンドになるとは思わなかった。余白のあるラストだったというのは置いておいて、少なくともそう捉えられるように着地するとは。

中屋敷さん演出らしい、同性間の閉じた関係の重さ濃さをしっかり浴びた気がします。演劇ドラフトグランプリでの中屋敷さん作品なんかは一般向けに作られていたんだと実感しました。

 

平野良さんの朝彦さん、好きでした。特に「弟と妹がいる俺にとって手のかかるやつの世話を焼くというのはもはや人格の"核"」(ニュアンス)の台詞が胸に刺さって。さらにその10数年後に母校の教師になっていて2人(もうすぐ3人)の子持ちというのも、良い。

これまで観たことがなかった、平野さんの困ったような顔も新鮮でした。平野さんの朝彦だったからこそ、時代背景の違いも伴って品のない発言も多少あったのを上回る魅力を感じたのかなと思います。Aの回に行けてよかった。

 

そして夜彦を通して、親になることの難しさや覚悟を痛感しました。

自分自身も10代を経てきたとはいえ、年齢は夜彦父の没年の方が近いので、夜彦父もやむを得ない(それこそ作中であった夜彦の独白のような)思いがあっての決断とは想像がつく。しかしその決断が後々まで夜彦を傷つけている。

自分自身は一連の舞台上で表現されていたようなことをあえて避けて生きてきた自覚があるので、これからも逃げたままでいられるのかと突きつけられた気になりました。

そこまで考えて、村田充さんがかつて子供を望むか否かの相違で神田沙也加さんと離別していたことに思い至り。どのような思いでもって夜彦を演じたのかと苦しく、結局ここでも逃げて深くは想像できなかった。ただ全てのプロの役者である方々にとって、演技に私情が乗っているのではないかと捉えるのは失礼にあたるような気もしています。

高校から大学にかけて学生演劇に触れた際、たまたま続けて陰鬱な後味の作品に触れたことを差し引いても(自分の考えと沿わない言動や辛いと感じる状況を何度も演じることはきっと耐えられないだろう)と感じたことが制作を志さなかった大きな理由のひとつなので、その恐れを乗り越えて舞台の制作に関わっている方々を等しくリスペクトしています。

重い話にはなったものの、やはり2024年の初観劇で観てよかったと感じる作品でした。ありがとうございました!

 

中屋敷法仁さん演出作品の感想

平野良さん出演作の感想