震えてるのは君のほう

You’re Dream Maker.

舞台「フォーティンブラス」2022感想

メインビジュアルからして最高な舞台、こと「フォーティンブラス」に行ってきました。2022年の再演が初見です。6/4の昼公演。

と感想を始めたかったのですが、これを書いていた6/7の夕方に残りの東京公演の中止が決まりました。息抜きにTwitterを開いたつもりが、喉がひゅっとした。

とにかく悔しい。劇中で主張を飛ばし合う彼らを双眼鏡で見て、つばが飛ぶのまで見える、と思ったんです。その姿を真に迫っているとしか、緊迫感のあらわれとしか思っていなかった。本来は危ないことだというのをすっかり忘れていた。

それだけ作品にのめり込んでいたとも言えるけど、飛沫に危機感を覚えなかった自分に愕然としました。観客として、いっそう気を引き締めて生活します。

とはいえ感想は書きかけていたので、以下そのまま続けます。

戸塚祥太が内博貴につかみかかる「フォーティンブラス」ビジュアル解禁 - ステージナタリー

 

はじめて来た自由劇場はおしゃれでした。ロビーがモダンで、箱全体に雰囲気がある。
入ってすぐのところから、劇中劇ハムレットのキャストボード(役名入り・撮影禁止)の掲示に気持ちが高まりました。

内くんファンのA.B.C-Z箱推し河合担、のマインドで行ってきました。日替わりでちょこっと踊るところのダンスが「仮面舞踏会」で嬉しかった。

トラウマだった剣を持つ決意をした場面の内くんがかっこよかったです。汗でびしょびしょになった顔が発光していた。2階席にいたので、天を仰ぐ表情がよく見えました。

そして友情出演さんこと梅宮さん(役名が思い出せず、キャストボードの画像を今確認した)へ媚びるところは可愛かった!元々「イン・ザ・プール」の内くんで恋に落ちたので、情けない姿も素敵に見えてしまう。

一触即発の空気の中で梅宮さんが登場してスローモーションになった場面、すごかったな。以前見た「奇子」(とワールドトリガーファンの友人から聞いたワーステ感想)も踏まえて、中屋敷さんは体の動く人を思いっきり動かして舞台を作りたいスタイルなのか、と感じました。

その分、中屋敷さんの演出で(A.B.C-Zの中でまだ関わっていない)橋本くん河合くんが出演する作品の想像は少し現実感から遠ざかってしまった。

比較的、あくまでグループの中では「静」寄りの2人だと思っているので。とはいえ、手がけられた際にはぜひ観たいです。よろしくお願いいたします。

 

ここから更にストーリーに触れるので、あらすじを引用します。

このあらすじ、恵子さんなる人物が唐突に出てくるのですが「若い女優(の恵子)に手を出そうとするわとタチの悪いことこの上ない。」の部分の脱字というか誤植なのかな。

お馴染みの名作『ハムレット』が華やかに上演されている、とある古ぼけた劇場。その楽屋で、売れない役者・羽沢武年が、上演中だというのにヒマしている。彼の役は、ノルウェーの若き王子、フォーティンブラス。

役名は勇ましいが、最初の出番は、芝居が始まって約2時間15分後。それもただ舞台を通り過ぎるだけ。二番目の出番は全ての物語が決着を見た後。のこのこ登場し、最後のまとめをするだけの、いわば「刺身のツマ」。

その上ハムレット役の大スターは、横暴で、陰険で、勝手に芝居を変えるわ、若い女優に手を出そうとするわとタチの悪いことこの上ない。武年ばかりでなく、オズリック役で恵子の恋人である岸川和馬やオフィーリアに抜擢されたバラエティタレント刈谷ひろみさえも、そんな大スターに嫌気が差し、楽屋には一触即発の不穏な空気が流れている。

そんなある夜、芝居のはねた劇場に、突然不気味な亡霊が姿を現す。亡霊は、自らを「フォーティンブラスの父」だと名乗り、そして武年に向かって言った。

“我が息子フォーティンブラスよ。さあ、今こそその汚れ亡き高潔な血を熱くたぎらせ剣を抜け。
そしてその剣に、ハムレットへの復讐を誓うのだ!!”

その言葉にとまどいながらも武年は、亡霊にハムレットへの、そして大スターへの復讐を誓うのだった。

しかし劇場付きの老女優、松村玉代は、亡霊の姿を見て驚いた。この男は、「フォーティンブラスの父」なんかじゃない。昔、玉代が一緒に芝居をしていた俳優の岸川和春……すなわち、オズリック役の岸川和馬の死んだ父親の亡霊だ……しかし何故今頃、和馬の父が亡霊となって、思い出の詰まったこの劇場に……??

果たして武年の復讐の行方は?
そして亡霊が寄せる、この舞台に対する想いとは?

「フォーティンブラス」公式サイト|戸塚祥太、内博貴ほか出演

要はこの亡霊ことお父さんは、演劇への未練から「ハムレット」の台本を読んだ上で自分で作り出した役「フォーティンブラスの父」に自我を囚われていたわけです。(と理解しました)

彼は最後まで役として存在していました。俺は誰だ?と自らの演じる役を忘れかけることはあっても、本名の自分を思い出すことはなく息子の名もついに呼ばなかった。

それでも最後には、実の息子の背中を押せた。息子が役者としての父の姿を尊敬していたから。そこに安心して涙が出ました。

岸川父子のやり取りを中心に、後半はかなり泣きました。コンタクトが落ちかけたくらい。

 

クライマックスは「この劇場には3人の霊が出るの。1人はチェーホフの「かもめ」がかかると現れる女の霊、もう1人はいつの間にか紛れ込んだ子供の霊。そして最後は男の霊」の台詞(ニュアンス)に出ていた子供の霊がキーになるのかと少しよぎりましたが、そこは完全に関係がなかったです。

(謎の子供の霊に下衆な想像をするなら、玉代がかつて堕胎した和春との子の幻影というのもありそう。)

どうして舞台を観るたび深読みして外すのか。チェーホフの銃よろしく、劇中に出てくる物事のすべてには意味があるとつい思ってしまう。

せっかくだから車田正美さんがカーテンコールで全員をきちんと紹介して幕が降りるところも見たかったけど、そこは「フォーティンブラス」の物語だから仕方ないか。

 

「死は眠り」の台詞を朗々と唱えてなお成仏しなかったノルウェーの王。今まさに上演中の公演に干渉し、同世代を生きた役者仲間を巻き込み(連れて行った、連れて行かれたというよりは彼女はあのタイミングで天寿を全うできたイメージ)やっと舞台という名のこの世を去りました。

役を生きることの難しさ、役を愛することの難しさ。先日観た「next to normal」でも心に傷を負った役を演じる方々にあっただろう負担に思いを馳せたことと重なりました。与えられたどんな人生も自分のものとして受け入れる、それを仕事とする役者さんへの尊敬がますます深まっています。

中屋敷さんを始めキャストスタッフの皆さんには、ここまでの執着を生みうる演劇の魔物や神様の姿が見えているんだろうか。どこか恐ろしくも感じました。

 

終演後は芝浦アトレのthe 3rd Burgerで1人食事して帰っています。

ブロッコリーバーガー、酸味強めのドレッシングが使われていました。野菜がしっかり入っていて、ハンバーガーを食べても罪悪感が薄い!

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上でも少し触れた、内くんの「イン・ザ・プール」感想はこちら。

休演期間に関係者の皆様が安全に静養できることを、大阪公演以降を無事に終えられることを心から願っています。