震えてるのは君のほう

You’re Dream Maker.

演劇ドラフトグランプリ 全劇団の感想

6月14日に行われた「演劇ドラフトグランプリ」配信で観ました。いやもう、すごかった。いいものを観させていただきました。

偏った知識でドラフト編も未見の中、有識者へDMやLINEで注目ポイントを教えてもらいつつ臨んだ感想を初見メモを元にまとめます。

(公式サイトから引用した各劇団の概要は、すべて敬称略としました)

俳優たちのお祭りだ!クリエイターと共演者を逆指名、荒牧慶彦プロデュース「演劇ドラフトグランプリ」 - ステージナタリー 特集・インタビュー

 

ID Chekers「キセキの男たち」

テーマ:奇跡

演出脚本:中屋敷法仁

出演:荒牧慶彦/赤澤遼太郎/輝山立/定本楓馬/萩野崇

最近「フォーティンブラス」を観て「中屋敷法仁さんの演出って、動ける人を派手に動かしているのが特色なのかも?」と感じたのを確かめようと観てみました。

実際には、動き「だけ」が武器じゃなかった。言葉の使い方に感情のぶつけ合いという脚本演出の強みが、冒頭の韻と野球においてのバッテリー同士およびライバルの関係性の描き方に現れていました。

中屋敷さんは、いわゆる巨大感情を見せたい人なんだなあと実感しています。同級生間での横軸の会話と、過去未来の自分の間での縦軸のやり取り。(数作品を観て全体を語るのもおこがましいものの、彼のTwitterプロフィールで経歴の末尾に書かれている「とつごミニドラマ」を押さえているのでそれなりには詳しいと自負しています。)

荻野さんによる「あるいは喜劇」の台詞の重みが印象的です。棒付きキャンディー食べて「俺は三流だ」と言いつつなんだかんだ親身で最後にはきっちり高校生の背中を押す監督、二次元のキャラクターすぎた。

モーリーロバートソンさんがよかったと言っていた「監督の表情」はおそらく抜かれていなくて見られなかった!配信に慣れて今回に限らずありがたみを享受してはいるけど、やっぱり目線がカメラワークに固定されないのが生観劇の強みだと実感しました。

 

打「林檎」

テーマ:りんご

脚本演出:西田大輔

出演:佐藤流司/小西詠斗/椎名鯛造/高木トモユキ/野島透也

「映画刀剣乱舞」を観たとき出演されていた椎名さんがいる!と楽しみでした。あとは佐藤流司さんのカリスマ性がすごい、とも聞いていました。

前衛的すぎる!!

ピューと吹く!ジャガー』のポギーがワンマンショーをやった回を思い出した。

わからない……せめて素顔を…素顔を……と思いつつ観ていたけど、仮面とフードに隠れて行われていた野島さんと佐藤さんの入れ替わりに全然気づけなかった。悔しいです。

佐藤流司さんの”圧倒的主人公感”と殺陣の強さが充分に伝わってきました。ライトセーバーで行われる殺陣を見ることになるとは。

これは現地にいたら呼びかけに応じて手を挙げるか迷っただろうな。全体を通して客席はほぼ映らない構成だったことはありがたいものの、客席に向かって語りかけられていた場面での反応はどうだったのか気になりました。

マガジン編集長さんのコメント、「最初に笑いを入れていてね、『優勝したい』と声が混ざったときは僕も『ジャンプより売れたい』と思っちゃいました」最高でした。やはり審査員さん勢もエンタメのプロの方々だからこそ、直後に求められる感想にも強い。

西田さんの世界観とんでもないな……。原作ありで演出するとどんな風になるのかも気になりました。覚えておきます。

 

超MIX「Luda リューダ」

テーマ:虹

脚本演出:植木豪

出演:高野洸/後藤大/寺山武志/福澤侑/本田礼生

タイトルを調べたら人名などの他に「中国にある産業大都市圏」の意味もありました。

ludaの意味・例文・発音 | 画像付き英語辞書 Imagict

ダンスとアクロバットが武器のメンバーが集まったとの前評判は把握していましたが、本当に動きに動いていた!

確かにテニミュ3rdの立海編を観ていた際に、仁王役の後藤大さんキレがすごいな〜と思っていました。今回の作品でも、途中でこの方が後藤大さんだな?とピンときていた。彼で「里見八犬伝」の犬塚信乃(女装の剣士)役を見てみたい。ロゴデザインも担当したとのことで、多才ぶりに驚きました。

衣装が贅沢でメイクが派手で、目にも楽しかったです。衣装も舞が映えるよう逆算して作られたのかと思うくらい。

「活き活きと生きるから生活なんだ」のワンフレーズにはっとしました。本当に生活をできているのか、ただ生きているだけになっていないかと定期的に振り返りたい。

皆に見せ場があって、脚本演出による軸と役者さんによる軸が綺麗に噛み合っていて、バランスよくエンタメ!という感じが好みでした。

テーマの入れ込み方だけ(相対的に)弱いと感じたけど、創造主の知った好悪や善悪がどれも鮮やかで虹の各色のようだということ?でいいのかな。

尾上松也さんの「神々がもはや熱血コーチに見えた」が微笑ましかった。

優勝発表後の植木豪さんのトークも楽しかったです。

 

ズッ友「天を推(すい)して歩く」

テーマ:地図

脚本演出:松崎史也

出演:染谷俊之/赤澤燈/唐橋充/野口準/松井勇歩

ジャニーズ同担で繋がってる方の推しさんが座長!(ジャニオタ目線ゆえか、老中・松平定信が若き日の松潤に見えた瞬間があった)

「渋くも明るいおじさんが主役」という点が個人的にがっつり刺さりました。

リアルタイムに間に合わずグランプリを獲ったと知った上で見たことを差し引いても、優勝に大納得です。伊能忠敬の出身である千葉県で育っているので幼い頃から馴染み深い彼の物語が濃密にドラマチックに描写され、父と息子の最後のやり取りには涙しました。

日本の歴史ものでありつつも黒白のシックな洋装に銀縁眼鏡も取り入れたビジュアルと、測量器具に大きな日本地図。道具とその魅せ方の面でも鮮やかでした。

モーリーロバートソンさんの「かつて大河でペリー役を演じたときに、江戸時代には変化を唱えた人々に圧がかけられ均質な日本が続いていたと調べた。だからこそ黒船以前に星を見て、夢を見て、大きなことを成した人の姿に特別な思い入れを持った」(※かなり要約しています)といったコメントからも、実体験に基づいたエピソードでより物語に厚みを感じられました。

そして脚本を読んでのコメントが素敵だった松井勇歩さん、素は関西弁!最高です。

背中を"推される"方がいたら嬉しいし"推して"あげたい。
作品に息を吹き込むのが楽しみです。

観終えて、改めてこのコメントが沁みました。本当にタイトルが綺麗で、グランプリの発表も「劇団ズッ友!」じゃなくて「天を推して歩く!」と聞きたかったくらい。(チーム名も!素敵です!)

 

改めて、荒牧慶彦プロデューサー。最高の企画をありがとうございました!

 

中屋敷さん演出作品への感想はこちらです。