河合郁人主演ミュージカル「天国の本屋」よみうり大手町ホールで観劇しました。
原作も初日からのネタバレも読まずに、まっさらな気持ちで挑んだ。ストーリーの鍵だった『ナルニア国物語』も、かつて序盤で挫折していた視点での感想。
ナルニアを1巻の途中で諦めた理由は、少年が魔女のプリンを食べる場面の描写が怖かったから。プリンの魔力が、当時小学校で読んだばかりだった教材「ドラッグの危険性」と重なってしまった。
幕が降りた直後は、あっさり再会できたふたりに少し拍子抜けしていた。でも観劇後に原作とパンフレットを読んで、自分の中で少しずつ理解できたと感じます。
これからさき、あの人たちは、地上の何人も読んだことのない本の、偉大な物語の第一章をはじめるところでした。その物語は、永久につづき、その各章はいずれも、前の章よりはるかにみのり多い、りっぱなものになるのです
ユイの読んだ最後の文章は、ナルニア国物語の最後を知らない私にもすんなり入ってきた。天国とナルニアはどちらも「非日常」の象徴だったんだ、と理解した。
ナルニアでの冒険は彼らの人生のほんの序章にすぎない、と読み上げられる。さとしとユイが天国で過ごした日々も、二人が現世で前向きに生きるためのきっかけにすぎなかった。
非日常での経験をその後の人生のアイデンティティにしてはいけない、ということだと思う。特別な出来事はあくまで人生を変えるきっかけで、本当に大切なのはその後の日常なんだよ、みたいな。
ラストシーンの後も、彼らの物語は素晴らしく続いていく。それを示すための、大人を勇気付けるミュージカル版ラストだと感じました。
何気なく思える日常の中に、その後の人生を大きく変えるヒントが隠されているってメッセージもあるのかもしれない。
さとしがすっかり忘れていた幼い頃の病院での朗読が、十数年後の店長代理スカウトに繋がって生きる目標を見つけられたように。
『ないた赤おに』で祖母との記憶を思い出してはっとしたさとしが表情を険しくした場面が特に印象に残っています。
全体的に原作に忠実に作られたからこそ、その中の細かい台詞の違いに意図を感じた。
例えば原作でさとしがユイに言う「遅咲きのアイドルデビューなんか狙ってて発声練習してるんじゃないだろうかって」は、「アイドルグループの推しメンにファンレター書いたりしてるんじゃないかなって」という台詞に変わっていた。
これは河合くんと井上さんが既にアイドルだから変えたんだろうか。それとも観客にアイドルのファンが多いだろうから感情移入しやすいように、ってことだったのか。
改めて今回のミュージカル「天国の本屋」を作ってくださった全ての皆様、ありがとうございました。この観劇で受け取ったあたたかい気持ちと、明日からの日常という人生の次の章を大切にしようと思えた。
この経験を経た、これからの河合くんの活動もとても楽しみです。