震えてるのは君のほう

劇中劇と役替わりが好き

ミュージカル「モンパルナスの奇跡」感想

※本ページはプロモーションを含みます

キングアーサーで大好きだった浦井健治さんと宮澤佐江さんの組み合わせをまた観られる!ということで行ってきました。ミュージカル「モンパルナスの奇跡」、6/16夜の回。

よみうり大手町ホールのロビーで画家になっていたあるふぁん(plus aのマスコットキャラ)のあみぐるみが可愛かった。

※あらすじ以下はネタバレありの感想です

第一次世界大戦下のパリ。

無名の画家モディリアーニは孤高の画風で批評家を寄せつけず、毎夜カフェで客をスケッチし売り歩いては日々をしのいでいた。ポーランドの若き詩人・ズボロフスキーはモディリアーニの絵に感動し、彼を成功に導こうと自ら画商に転身する。だが、前途には想像を超えた障壁が待ち受けていた。

パリ・モンパルナスの街で繰り広げられる、ふたりの男の友情と葛藤、愛と裏切り、警察沙汰、戦争の影、生と死。やがてモディリアーニはうら若き女性ジャンヌとの愛にのめり込み、衝撃のラストへと突き進んでいく。

ミュージカル『モンパルナスの奇跡~孤高の画家モディリアーニ~』公式ホームページ | 2024年6月中旬よみうり大手町ホール | 出演キャスト、日程・チケット情報など

芸術家が題材の舞台あるある、主人公の没後から始まって生前を振り返る構成。

芸術ものの作品だと主人公の作品の凄さは抽象的に示されることも多いけど、今回は場面場面でモディリアーニの絵の複製画が大きく吊り下げられて視覚的にわかりやすかった。絵が「決して技巧的ではないが不思議な懐かしさが云々」のように評されていたときも、客席で置いてきぼりにならなかったというか。

その一方で、日常ではまず目にしない大きい裸婦像が若干気まずくもあった。そういう風に思うのもどうなのかと迷ったけど、個展に乗り込んだ警官が言っていた芸術と不健全の境目になる描写を踏まえると一般的な感覚の範疇だったかも。

個展といえば人が集まった場面で「黒山の人だかり」と歌詞があったとき、それは皆ほぼ黒髪の日本だからこその言葉なのでは?と一瞬気になった。

 

そして大きな絵を舞台美術の主にしていた影響なのか、舞台上が基本的に暗かった!最近だと千と千尋の舞台が暗くて、そのときはジョン・ケアードさん演出ゆえに日本とは照明の文化が違うからかな?と思ったんだけど。今回のG2さん演出は、作中当時のフランスの文化に寄せての暗さというのもあったのだろうか。

夕暮れを闇が塗り潰す、みたいな歌がリプライズもあって印象的だった分、明るい場面と暗い場面のコントラストがあったほうが好きだったな〜と思う。というより、単純によく見える明るい舞台が個人的な好み。

 

ズボロフスキーがアンナへの夫婦愛とモディリアーニへの友情を自然に両立させていて、ところどころアンナに苦労をかけていた場面はありつつも無理にどちらかを選ぶようなことがなくて嬉しかった。

夫婦愛と友情が対立項になっていなかった点では、ミュージカル「マリー・キュリー」も連想。

ズボロフスキーが語っていた、絵の価値はお金に替えられないところにあると考えているがその価値が実感されるにはできるだけ高く買ってもらわなければならない、という画商としての矛盾の話が印象深かった。

誰かの台詞でフランスの地名として「コートダジュール」が挙がったときにカラオケチェーンがよぎった観客ではあったけど、いつかは自分のために絵を購入して精神的に生活を潤す経験をしてみたい。

 

最後は病死したモディリアーニを追って妻ジャンヌは身を投げてしまい……という展開で、その時点で生後1年は経っていたはずの幼い娘はどうなったのかが気になって仕方なかった。

明らかに巻き込まれて不幸になっているのに娘のその後は語られずに終わり、こんなことがあってはならない(と思うのに実話である以上は起きてしまったことだ)とやり切れない気持ちで劇場をあとにしていた。

いてもたってもいられず、帰り道すぐに「モディリアーニ 娘」で検索して確認。

残された妻のジャンヌ・エビュテルヌは次子をみごもっていて妊娠8か月でしたが、モディリアーニの死の2日後に飛び降り自殺してしまいます。

わずか1歳の遺児ジャンヌ・モディリアーニは、イタリアにいた祖父母(モディリアーニの両親)に引き取られ、叔母(モディリアーニの妹)を母代わりに育ちました。モディリアーニの遺児~モディリアーニの妹に育てられたジャンヌ - 銀座の絵画販売・買取の画廊- 翠波画廊

娘は無事に育てられていたので客席で恐れていた最悪の事態は避けられていたものの、身投げによって産まれる前の双子も犠牲になっていたという新たな辛い事実も知ってしまった。

前々から耳にしていた「動物が不幸になる展開が受け入れられない人」のように、幼い子供が不幸になる場面が観られないようになったのかもしれない。半年ほど前から婦人科系の疾患で人生の選択肢から妊娠出産が失われる可能性も考えざるを得ない状況で、子供がいながら育てる責任を持たなかった姿への悔しい思いも正直あった。(大袈裟に書いてしまったけど日常生活には支障なく、人生の選択肢から〜というのも現状ではあくまで最悪の事態を想定したという話。)

このまま拗らせるとストーリーを把握していない作品を気軽に鑑賞できなくなりそうで、それも恐ろしい。チケットを買う前に内容を調べて苦手な展開を避けるのも味気ないし、実話や定番でない新作だったら内容を確認しようがないし。

フィクションと割り切るか、気持ちを強く持つしかないのか。

 

話がかなり逸れてしまったものの、やっぱり観てよかったと思う作品でした。浦井さん佐江さんをはじめキャストの皆さんの歌が魅力的だったし、佐江さんジャンヌの「試してみる?」にはドキッとした!

モディリアーニの作品も見てみたくなりました。

 

言及した他作品の感想はこちら。