震えてるのは君のほう

You’re Dream Maker.

アイドル短歌集「自選10短歌集2022」投稿分(No21)の裏話

「自選10短歌集2022」に参加いたしました。59名中の掲載順は、(20)22から1を引くで覚えやすいかもしれない21番です。

どんな企画なの?というところについて簡単に引用します。

2022年に詠んだ・発表した短歌から10首選んで持ちよって、紙面にまとめて楽しもうという企画です。

「自選10短歌集2022」に参加しませんか?|鷹野|note

2021年から始まっている企画で、2度目の今回から参加しました。

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公開されていた紙面イメージを元にWordでサンプルを作り、見ながら提出準備をしました。

 

提出まで

10首を選ぶ

作った短歌の管理をしていなかったので、過去のツイートとメモアプリを見直して書き出しました。書き出した全26首を並べ、そこから10まで絞り込んでいます。

先頭は「改行込みで表示されたいもの」を基準に決めました。2年目からの参加で、レイアウトがわかっていたため。

その後は連作4つから1〜2首ずつ選び、単発で作ったものと組み合わせています。

前半はA.B.C-Zについて作った短歌、後半はアイドルファンまたはオタクとしての短歌になるようグラデーションしました。

上述の「アイドルファンまたはオタクとしての短歌」を言い換えると、ジャニーズ短歌WEB歌集「J31Gate」に「アイドル名なし」で投稿できそうなもの、という感じ。

フォントと文字色を選ぶ

フォントの選択肢が明朝体・丸ゴシック・角ゴシックとあり、すぐに丸ゴシックに決めています。これまでに「うたの短冊メーカー」で連作を画像にまとめる際には明朝体を使っていたのですが、書体見本を見たら丸ゴシックにしたいと感じました。

文字色は迷った!初期には色名おまかせも候補にしていたものの、10首を選ぶ過程で今回は緑にしようと決意が固まりました。

デフォルトの選択肢にあった「千歳緑」もかなり良いなと思ったのですが、最終的に依頼したのは「ビリジアン」です。選んだ短歌を見たとき全体的にカタカナが多く使われていると感じたので、合わせて色名も洋の色にしました。

自己紹介

160字程度とのことだったので、ツイート画面で文字数を見ながら下書きしました。

A.B.C-Z 河合郁人さんのファンです。よく笑う人が好きで、声優の福原かつみさんのファンでもあります。短歌との出会いは高校の教科書で触れた吉井勇さんの作品、原点と感じている歌集は穂村弘さんの『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』。

初参加であることも踏まえ、自分の短歌のバックグラウンドをできるだけ示そうと意識して書いています。

2021年版の自己紹介で好きな食べ物を挙げている方がいたので書くか迷ったものの、浮かんだ好物が短歌の雰囲気と合っていない気がして外しました。

ラミーチョコが好きです。

 

それぞれの短歌について

自選短歌集内にこちらのページ画像を作成いただきました。

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ノンカロリーのガムシロップを飲み干して 状態異常・恋が点滅

Twitterコミュニティ「アイと短歌」にのみ公開していました。推すとは恋愛感情の上澄みをすくったようで、カロリーや栄養を伴わない甘さだけがあるみたいだと思ったときの短歌です。

「飲み干して」が区切りのつもりでいたら「ノンカロリーのガムシロップを」で改行してあって驚いたのが自分のページを見たときの第一印象でした。たしかにフォントサイズとの兼ね合いを考えるとこのレイアウトになる、と納得しています。

【追記】鷹野さんからこの記事へ反応をいただいた中で、「575/77できれいに切れてるとこに改行入れるとリズム良すぎて標語っぽく見えちゃう」とあって目から鱗でした。
今後見せ方を検討するときも、標語のようになっていないか?は意識したいです。

 

高跳びで壁越えたきみ その頭上にも背後にも雲ひとつなく

音楽劇「コインロッカー・ベイビーズ」の思い出について作った連作かより。(2018年に観た作品について、2022年に短歌を詠みました)

キクの歌です。高校で陸上の選手だったキク。

夜の東京で高い壁を飛び越えて危ういコミュニティへ飛び込んだ場面と、高校時代に選手として青空の下で高跳びをしていた姿の想像が重なりました。

読み返していない原作の方には天気の描写があったかもと不安がよぎったものの、まあ舞台上には物理的に雲ひとつないわけだからと押し切って決めています。

コイベビ短歌と赤坂ACTシアターの思い出 - 震えてるのは君のほう

単体で見たら塚ちゃんのこととも読めるかな?と思いましたが、彼は雨男なのでやっぱり違うなあ。

 

帯でもない襷でもない10年で織り上げてきていたのは奇跡

2022年にデビュー10周年を迎えたA.B.C-Zの、その中でも特に戸塚祥太さんをイメージして作った短歌です。

ぼたんさんとの相互題詠でいただいたテーマ「10周年」で作ったうちのひとつ。

コンサート名古屋公演9/18夜に戸塚さんが口にしていた

「インタビューで『デビューしてから10年、長かったですか?短かったですか?』と聞かれるたびに上手く答えられず、インタビュアーさんに悪いからと無理やり答えることにも罪悪感があった。長いでも短いでもなく奇跡と思っているんだとやっと腑に落ちた」

というニュアンスの発言を短歌にしました。

長くも短くもない、からスルッと「帯に短し襷に長し」が出てきた。「たすき」と「きせき」で韻を踏めているのと、下の句「おあげてたのは」とイの音が続くテンポ感がお気に入り。

相互題詠でA.B.C-Zの短歌を作りました - 震えてるのは君のほう

 

デビューした頃に生まれた赤ちゃんがもうジュニアになってるんだよねえ

こちらも上と同じく、テーマ「10周年」での連作の一部。河合郁人さんがメンバーとリラックスしているときの喋り方を思い浮かべて作りました。

河合くんが言ってそうで意外と言ってない、実は言ってるかもしれないフレーズ。

相互題詠でA.B.C-Zの短歌を作りました - 震えてるのは君のほう

2022年の自作を振り返ったとき明確に自担を想定したものがこれだけだったので、河合担としてのアイデンティティも意識して入れています。

特に自担への熱が冷めているわけではなく、特定の1人について作り始めても最終的にいろんなエピソードが混ざって誰のことか曖昧になりがち。

 

変わるならあたしの手で終わらせたいと思ったの そのときはたしかに

音楽劇「コインロッカー・ベイビーズ」に関する連作から2首め。

赤坂ACTシアターハリーポッター専用劇場に改装されると知ったときはショックだった、けど最近は諦めがついてきた。という歌です。

2幕の最初は、ハシを庇って彼の母親を撃ったキクが裁かれる裁判のシーンから始まります。生気を失った様子で実刑判決を受けたキクに向けて、彼の恋人アネモネが「死んだように生きるなら あたし あんたを殺してあげる」と歌うわけです。

そのあたりの展開や歌詞を踏まえて「思い出の場所が別物へと姿を変えてしまうくらいならいっそのこと自分の手で」といった旨をツイートしたら「オタクの過激な発言」のニュアンスで(おそらく作品を観ていない人のところにまで)少し広まった。

皆それぞれ過去に似たような思いを持ったことがあるのかもしれない。

コイベビ短歌と赤坂ACTシアターの思い出 - 震えてるのは君のほう

ひらがな続きで縦に長い短歌を並べることで形のバランスを取ろうと、「デビューした〜」に続けて置きました。

 

きりがない日々の隙間で声を聞く 賽の河原をモーセが通る

鷹野さんとの相互題詠でいただいたテーマ「家」から。単体だと「家」らしさがないな。直接的に家とは言っていないものの、いちおう「日々→生活→家事→家」の連想が元になっています。

洗濯や料理、もっと言えば毎日の入浴や食事に対しても終わりがない虚しさをふと感じたとき好きなラジオを聞いて気持ちをフラットに持ち直したとき思いついた短歌です。

10首の流れの区切り、A.B.C-Z関連の具体的な?内容から抽象寄りのアイドル短歌に移行する境目として真ん中に入れました。

 

アルコールかアイドルで制する日常 弱毒性の百薬の長

推しで健康になるとか万病に効くとかがぴんとこなくて、かといってそうしたフレーズを不謹慎だと思うほどでもなく。自分にとって生活の中の趣味はこの立ち位置だと示した歌です。

先頭にするのもいいかな?とも思ったけど、第一印象が先鋭化しすぎてしまう気がして後半に移動しています。

iとuの音のリズムがお気に入り。

 

あの日見た情景をボウルに混ぜて 31字の型で焼いたの

2022年11月頃にTwitterのアイドル短歌コミュニティ周辺で発生していた、自分にとって短歌とは何かを短歌で表す流行りに乗って作りました。

短歌って、生地(着想)を型(31字)の形で焼く(整える)お菓子作りみたいだと思います。と言いつつ、これを思いついたときお腹が空いてただけかもしれない。

 

パンのシール スニーカー柄 愛とはレターセット売り場で迷うこと

ファンレターを書こうと書店の文房具コーナーに行き、その人らしいモチーフのレターセットを探して迷ったときのことを短歌にしました。

実際にパンのシールが売り場にあって、はっしーA.B.C-Zの橋本良亮さん)はこれが好きだろうなあと目に止まったのをモチーフとして入れ込んでいます。

選べなくて現在もファンレターを送れていないままなので、結局はレターセットが何であれ手紙を書いて出すことの方が愛なんだろうなあ。

そういえばアイドル短歌のつながりで始めた相互題詠でのテーマ「書く」なのに「ファンレター」を入れ込んでなかったな、と思いました。やっぱり自分があんまり書かないので思い浮かばなかった。

劇場にお手紙ボックスがあった頃はABC座などで入れていたんですが、郵送一択になってからはハードルを高く感じてしまって出せていない。

アイドル短歌のご縁から「相互題詠」をしました - 震えてるのは君のほう

ファンレターについての短歌を作って自選にも入れたことで、このときの心残りを解消できたのでよかったです。

 

5時間目ノートに歌詞を書いていた頃の私へ 今も幸せ

上でも少し触れた、にうむさんとの相互題詠でいただいたテーマ「書く/描く」で作ったうちの一首です。

小手先の得意技こと「あるあるでみんなの共通の思い出に訴えかける」。 なんだかんだジャニーズを好きになったのは成人してからなので、実際に書いていたのはアイドルのというよりBUMP OF CHIKIENとかのバンドの歌詞だったんだけど。ノスタルジーや憧れも込めて、「10代のジャニーズファンの女の子(の気持ち)」は繰り返し表現したくなるモチーフです。

最初の最初に浮かんだ出だしは「4時間目」でしたが、当時を振り返るとノートに歌詞を書きたくなるのって気だるい午後の時間だったなと「5時間目」に変えました。当時の私は大人になってからジャニオタになるとは想像もしていなかったけど、ありがたくも「今の方がもっと楽しい」と胸を張って言える生活をできています。

アイドル短歌のご縁から「相互題詠」をしました - 震えてるのは君のほう

10選を「今も幸せ」で締めたくてこの位置に決めました。

 

入れるか迷った短歌

彼はもう実家になったと微笑んで元・同担になる同級生

テーマ「家」にて作ったうちのひとつ。好きな人やもののことをホームとか実家とか言うよね、から連想しました。

放課後のファーストフード店で向かい合う友人が急に遠く感じた、架空の記憶です。実家というからには彼のこともまだ好きで、完全に降りたわけじゃないと分かっていても、彼女はもう「同担」ではないんだなあと。

名刺がわりの10選に含めるには(普段の雰囲気比で)薄暗く感じて、無念の選外。

 

暗くなってはじめて家を出る贅沢 イヤホンからradikoのタイムフリー

これも、テーマ「家」から。

縦書きで「radiko」表記だと縦に並ぶアルファベットがしっくりこないからと「ラジコ」に変えて出すことも考え迷いました。

それでもやっぱりこの短歌は横書きが馴染むとの結論に至っています。

 

似顔絵を描く 何度も思い浮かべる
あなたを見つめた時間の証

にうむさんとの相互題詠でいただいたテーマ「書く/描く」より。

人の絵を描くって、描いた時間の分だけ資料やキャンバス(紙や画面)に向き合っているということなんだよなあと。

だからファンアートを描ける方って素敵だと思うし、過去に辰巳雄大さん戸塚祥太さんからそれぞれに似顔絵を描いてもらっている河合郁人さんは愛されているなあと思います。自分も一度は絵に挑戦したものの挫折したので、余計に。

アイドル短歌のご縁から「相互題詠」をしました - 震えてるのは君のほう

これは改行ありきなので先頭に置く候補でしたが、逆に先頭が決まってからは他の場所に1行で配置することに違和感があって外しました。

 

おわりに

鷹野さん、企画と編集ありがとうございました!

ここまで読んでくださった方へ、よろしければこちらの記事もどうぞ。
短歌で出す創作鑑定の依頼、とても楽しかったのでおすすめです。

その他、2022年のアイドル短歌に関する記事はこちら。