震えてるのは君のほう

You’re Dream Maker.

「冬霞の巴里」感想

先日、宝塚花組の永久輝せあさん主演公演「冬霞の巴里」を観ました。

大阪楽での配信は都合がつかなかったので、東京で1回観ての感想です。

はいからさんのラストで歌う姿とその声量に心奪われた日から、ナイスワークに元禄バロックロックと注目していました。親しみを込めて「ひとこちゃんさん」と呼ばせていただいています。

期待に心躍りつつも、柚香光さん水美舞斗さんと共に花組の一角を担う姿からは復讐に燃える役の想像はつかず。

ともかく、いざ存分にその凛々しさと歌声を浴びん!と会場へ向かいました。

 

いやあ、本当に、観られてよかったです。

最初の最初こそタイトルの出ない幕に戸惑ったものの、「宝塚歌劇団花組の、永久輝せあです」と始まった開演アナウンスで既にぐっときました。

暗めの金髪に、重めのトーンでありつつ鮮やかな色みもしっかりある衣装。額のポンパドールには希望が詰まっていた。

剣技のためにとジャケットを脱いだ瞬間、タイトな黒の上下を着た姿が細かった!!ロックチューンで堂々と歌う姿も、複数回しっかり堪能できました。

 

そして演出が想像以上に攻めていた。白塗りで服は血塗れのゴシックな人形を模した役者さんが昼食会のテーブルの下から這い出てきたり。

2幕の最初は、罪の意識にかられた主人公の見る幻影としての前半ダイジェストになっていました。

すみれコードでの制約とは若干方向性が違うのかな?とは思うものの、外箱だと自由度が上がったりするんだろうか。

人形はオクターヴの憎悪や罪悪感の象徴なんだと、後半になってやっと気が付きました。

それにしても主役の名前のオクターヴ、序盤は音楽用語のほうがよぎって気が散ってしまった。ギョームに対しても(ぎ、業務?いや「吸血鬼すぐ死ぬ」もサギョウってキャラクターがいるし同じ感じかな)と雑念があった。

こうして書いていたら『吸血鬼すぐ死ぬ』を花組で見たくなってきました。柚香光さんのロナルドにマイティーさんのドラルク、ひとこちゃんさんの半田!いいなあ。

問題はトップ娘役たる星風まどかさんに床下暮らしのヒナイチちゃんをやってもらう必要があることか……。

 

ストーリーに関する前情報はほとんどなく臨みましたが、貧富の差で反体制への動きが拡大する過程は「マリー・アントワネット」でも観ていたのでスムーズに流れを飲み込めました。

作中のアナーキストらの主張では、「蜘蛛女のキス」でのバレンティンを思い出したり。

また主人公が自らの葛藤にセイレーンの物語というフィクションを重ねたところは「マドモアゼル・モーツァルト」の一場面を連想しました。

クライマックスではギョームの言葉「終わらないんだよ。ずっと」の重みが辛かった。

花組公演は宝塚の中でも特に明るめの題材でハッピーエンドになる印象が強かったので、耽美なほの暗さと余韻を残したラストに息を呑んだ作品でした。

 

ヒロインを演じた星空美咲さんは、声の出し方が声優さんのようだったと感じます。

美声だ〜と思いつつ声に何かを連想するなと感じて、アニメというかジブリ的に聞こえるんだ!と閃いた経緯です。声質なのか、発声の仕方なのか。その両方かな。

声のみならず、メイクを落としても素顔からくっきりしていそうなお顔も素敵でした。大きい声と大きい顔パーツが大好き。(華優希さんの大粒な瞳も好き。)

そして聖乃あすかさん、元禄バロックロックで演じていた役柄との振り幅がとにかく大きかった。観劇後に改めてキャスト一覧を見るまで全く気付かず、ギャップに驚きました。

ミッシェルの婚約者ことエルミーヌを演じた愛蘭みこさんは、ザ・娘役さん!と言わんばかりの姿がハートに刺さっています。

義理の兄とそんなに親しくしたらまずいんじゃないか、と内心慌ててしまうくらい入り込んで見ていました。お散歩の場面、ふたり街中でくるくるっと回る姿が綺麗だった。

 

ロックチューンも、ゴスのお化粧と演出も楽しかったです。

ROLLYさんのような装いの方も含めて、舞台上の皆さんが全員女性ということを改めて実感し驚きました。カーテンコールの際に止め絵で見ると、顔に絵を描いているかの勢いでメイクをされている方も何人かいたくらい。

「俺たちだけの、罪」で幕が降りた後は、当たり前のようにカーテンコールが始まるつもりで拍手していたらダンスが始まり一瞬戸惑ってしまった。男役さんの中に白塗りのまま踊っている方がいて、ふふっと微笑ましくなりました。

 

とはいえダンスがなくても十分なくらいだったと思えるのは、本編中でじっくり皆の格好よく綺麗な姿を観られたおかげです。

以前CITY HUNTER雪組公演を配信で見たとき、ショーで朝月希和さんのドレス姿を堪能したことで若干残っていた綺麗なきわさんへの恋しさを一気に昇華できた経験があるので。

私はショーやダンスパートを「宝塚らしさ」の最低保障だと思っていたのか。

カーテンコールは組長さんのご挨拶と専科さん紹介から開始でした。

その後の永久輝せあさんの挨拶では劇中より少し高い声に、素化粧ならぬ素に近い声だ!と感激しました。「白い季節」の歌声に近かった。帰宅後も「白い季節」を繰り返し再生して余韻に浸りました。

 

パンフレットも購入しています。

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よくチケットをお譲りしてくれた方に対して「女神様」などと言いますが、先日同行させてくださった方は誇張抜きにお友達になりたかったと感じる素敵な女性でした。

世が許すなら「よかったらこのあとミスタードーナツでお茶しませんか」と声をかけたかったくらい。(近くのお店がそこしか浮かばない)

永久輝せあさんについてのお話を聞いてみたかった。SNS経由のやり取りではなかったこともあり、後ろ髪を引かれつつ簡単にお礼を言ってさよならしました。

そんなことを思いつつ2階席から階段を降りると、1階の出口近くで「公演パンフレット600円」と貼り出されていた。

パンフレット600円!?

買いました。

外箱公演のパンフレットは600円だと初めて知りました。破格。

元々舞台は舞台で完結したい派で、パンフレットは好きな人(河合郁人さん)が主演か準主演のとき写真集がわりに買う程度でしたが思わず買っていました。好きな人(永久輝せあさん)の写真集として大切にします。

 

これほど美しさと凛々しさに全振りした永久輝せあさんを浴びてしまって、今後の公演で朗らかな役を演じる姿が物足りなく思えてしまうかもしれないとも感じましたが。それでも好きなままに応援し続けたいし、そもそも心が他に揺れそうもないと気持ちを新たにしました。

これからも、永久輝せあさんが大好きです。

 

surfcitybabies.hatenadiary.jp