Amazonプライムビデオで、2021年の春アニメ「オッドタクシー」を見ました。
漠然と好きだろうなと思ったまま時間が経っていた中、ふと思い立って見始めたら続きを再生する手が止められなかった。
金曜の夜10時から2時半までかけて夢中で10話分を見て、土曜は疲れから用事を済ませてすぐ寝落ち。日曜の夜に残っていた3話分を完走しました。あとオーディオドラマも。
こういう声自体は少し高めだけどダウナーに話す雰囲気ってあるよね〜ちょっとヴィジュアル系っぽい?と思いつつ小戸川の台詞を聞いていた1話、エンディングでCVが花江夏樹さんと知って驚きの大声が出た。ギャップがありすぎる。
4話「田中革命」も聞き馴染みのある声〜と思いながら見て最後に「斉藤壮馬!?」と言ってしまった。(書いていてふと「田中革命」のタイトルは「田中角栄」の響きとかかってるんだろうか?と思った。そうだとしてもさすがに深い意味はなさそうだけど。)
視覚と聴覚と文章どれもをフル活用した作品だったと感じます。
視覚はアニメーションの映像、聴覚はアニメ本編の音楽や台詞に加えて公式YouTubeで公開されているオーディオドラマ。
そして文章、アニメ内での文章を使った情報の示し方が好きでした。
SNSの投稿やメッセージアプリのやり取りに音声を被せず、ぎりぎり読める秒数で静止画を見せる表現。さらに活字の部分が作中の絵柄とひと続きの書き文字だったことで、より没入感を得られました。
実際Androidだとああいう手書き風のフォントもあるから、よりリアルに感じたのかもしれない。
これまでアニメの作中にテレビのテロップなどとして出てきた活字でなんとなく現実を感じて冷めたことがあったけど、それがなかった。
文章の内容のリアルさと自然な見せ方、両方があっての没入感だったと思います。
ここからは本格的に伏線や謎に触れるので、未見の方はご注意ください。
白川さんが「好きな人の写真」だと言ってインカメラを起動して渡す場面が好きです。あとはクライマックスに近い場面、大門弟が兄へ語る言葉には胸が詰まりました。
プライムビデオ作品ページのあらすじを見て「伊坂幸太郎作品の文庫本の裏にありそう」と思ったものの、想像以上にミステリーでした。
「どこで気づいたか」の話題だけで来年の朝まで酒飲める。
アニメ『オッドタクシー』がかいけつゾロリの皮かぶった宮部みゆき - kansou
どこで気づいたか、私は「共感覚」のワードが出たところです。この記事が公開された当時に読んでいたので、何か裏があるらしいと漠然と記憶していたのも気付いた一因でした。
小戸川には人が動物に見えている=共感覚と仮定しても、たしかに台詞のつじつまは合う。
柿花の「草食系とバカにされて〜」もルイの言う「こんな馬面のペットなんて嫌だよぉ」も、人だとしても使う表現だ!と興奮しつつ思い返しました。
「ゴリラに見える」と言われた剛力が「まあ、種類は合ってるな」と返す場面も、一瞬(いやゴリラそのものじゃないか)と思ったし。
遡ると、序盤に「皆やけに手の指がしっかりあるぞ」とは感じていた。ファンタジー表現なのかな?と流してしまって、伏線と思わなかったけど。あとオープニング映像も水に沈むカットはヒトだから、何か重要なタイミングで人間も出てくるのかもと思ってはいた。
なので最終話のモノローグはむしろ「セイウチだったのか!」という驚きが大きかったです。小戸川(おどかわ)なのもあってオットセイだとばかり思っていたので。
また全話見た今改めて振り返ると、「オッドタクシー」は小戸川の成長譚だったとも感じられます。
心身に受けた傷によって10歳から41歳までの約30年間を(本人にとっての)異界で過ごし、作中2ヶ月間の冒険を経て前向きに人間界へ戻った物語。
ある種「千と千尋の神隠し」だった。「行きて帰りし物語」の類型だったという意味で。個人的には「天国の本屋」も思い出しました。
41歳になっても、人は前向きになれる。そんな希望も持てた作品でした。
で、終えられれば良かったんだけど。2022年4月に公開される映画も楽しみです。
1話のプライムビデオを貼っておきます。
運を転がす手と書いて運転手。