震えてるのは君のほう

You’re Dream Maker.

『それを言っちゃお終い』今江大地さん・飛龍つかささん回の感想

3月3日に六本木トリコロールシアターで「『それを言っちゃお終い』VII. 〜ストレートプレー〜」千秋楽公演を観てきました。今江大地さんが女性を、飛龍つかささんが男性を演じた男女逆転公演です。

私はつー担(つかささんのファン)でチケットもFCで取っています。そして今回は今江さんとつかささん双方をはじめて観る、今までに触れたことがないジャンルの舞台に行ってみたいと言ってくれた相互さんと観ていました。


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つかささんのFC限定配信で「笑えるシーンが多い、台詞に共感しながら聞いてほしい会話劇」といったように聞いていたものの、雰囲気を想像しきれないまま観劇の当日に。

会話劇って朗読劇みたいな感じかな?難解だったらどうしよう〜と構えていましたが、セットと動きがしっかりあるダイナミックなストレートプレイで楽しかったです。

おふたりの衣装もしっかり役に寄せられていてそれぞれ女性らしい、男性らしい服装でした。

見切れているボトムスはデニムのパッチワークのロングスカートでした。

今江さんが劇中で度々やっていた「彼女」の含み笑い?目を細めて口だけ笑っていたような表情が印象的です。ちょっと慎吾ママを思い出したので、今江さんの素顔が香取慎吾さんに似ているのかもしれない。

つかささんの衣装写真は見つからず、こちらの投稿での服装が近い雰囲気だったので載せます。実際にはグレーを基調としたパンツスタイルに革靴で、靴下の花柄(ブルーグレーにくすみピンクのお花だったような)に抜け感を感じました。

他の方のレポによると、おふたりとも靴下は日によって違ったとのこと。靴下が日替わり要素って珍しくて面白い。

 

出演は2人でも、話の中でだけ言及される登場人物が多いので相関図を作って整理しました。

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彼と彼女の娘の名前はアンヌで、彼と前妻の息子はアントワーヌ?のような女性的な名前で言及されていたような。後から女性名を名乗ったのかも、など想像しました。

フリーハンドの手書きを公開するのは気が引けたのでアプリでも作ったものの、無料で登録不要のアプリだと複雑な家系図は作れなかった。彼・彼女どちらかの初婚は表示が省略されてしまう仕様だったので諦めました。

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席に着いたときから紗の奥で演奏されていたピアノが開演時間に一度止まり、プロデューサーさんの挨拶が数分あってから本編へ。

景というかショートコントのような短編に分かれていました。(舞台下手にイーゼルが立てかけてあり、話が変わるごとにタイトルをめくっていた)つかささんの事務所の告知では「15景の物語」と書かれていたのですが、観終えて書き出した限りでは11景だったはず。元の脚本から一部(過激なパートを)カットしたのかな?と推測しています。

各景の感想を書きました。ネタバレあり、結婚3年目のアラサー女性目線での自分語りもあり。順序や細部は曖昧です。

 

ケーキ

義理のお母さんの手作りケーキに「パサパサしてる」と言い放った嫁と後からそれを責める旦那、と比較的わかりやすい話でスタート。自分のお義母さんは料理上手でよかった〜と思ってしまった。

タクシーの配車アプリが出てきて、意外と現代的で驚きました。何故か少し古い時代のイメージを持っていたので。帰りがけに入り口のポスターを見直したらちゃんと「フランス現代劇」と明記されていました。


小児性愛

7歳の娘の習い事には同性の先生がいい、はわかる。実際深刻な事件も多いので。それでもやっぱり「(その先生は)小児性愛者じゃないですよね?」ははっきり言いすぎている!


履歴

同行者からここの景の「彼女」のボトムスが黄色で可愛かった〜と聞いたものの、全く記憶にない😂(←普段ブログ内で絵文字は使わないものの、iPhoneのメモアプリに残していた文をせっかくだからとそのまま貼りました。)

つかささんの口から「エ◯サイト」って言葉が出たのが衝撃すぎた!つかささんに品があるのでオッケーです。


ほのめかし

タクシーの中でのやり取りだったので、急ブレーキのとき腕を出して隣の席をかばった「彼」にときめきました。

友人夫婦と食事したときに夫が「ここの支払いは持つよ」と宣言して支払ったので、自分がまるで囲われているようで嫌だったと主張する妻。現状共働きの妻なので分からなくもなかったものの、彼女が主張するくだりが体感かなり長かったので徐々に「分からなくもない」よりも面倒さが勝ってしまった。彼と彼女それぞれへの共感を行ったり来たりした景です。

それでもやはり「(結婚したことで私が諦めたのは)自立している女性だということよ」と締められた言葉を聞いて、自立へのこだわりが薄い方だと自覚していた自分としても共感はありました。

数ヶ月前に前職の元同期(お互い転職済み)と会った際に時間の余裕がありそうでいいね〜と言われて「私は年収増よりフレックスを優先したから」のように話し、解散した後で(結婚したから自分の収入は少なくてもいいように思われたかな)と気にしたことを思い出したりもして。

 

この世の終わり

彼の「いい天気〜!」が可愛かった!2月に27度の暑さはヤバい。

彼女の前夫との間の娘がいわゆる環境活動家で、上の世代の環境破壊が異常気象の原因だと主張している話を受けて彼が「飛行機が環境を壊すと言ったって、自分が乗らなくとも飛行機は飛ぶんだ。俺が大統領なら話は別だろうが」のように主張していて。最近のニュースに対しても近い葛藤があったので胸が痛みました。

それまで好きだったものに対して、作っている企業の方針や裏側がわかって賛同できなくなったとき。自分ひとりが離れても離れなくとも影響はないことを実感して辛くなり開き直りつつもあったところなので、どのように向き合うべきか引き続き悩んでいます。

(それこそ演じたおふたりにとってもそれぞれ思うところがあったかもしれないテーマと感じ、勝手に苦しくもなりました。)


左翼

テーブルを挟み向かい合って座った2人の間を「右」「左」と大きく書かれたカードが飛び交う、視覚的に楽しい回でした。どちらも勢いよく叩きつけたり投げたりしていたのに、舞い方が綺麗でプロの技を感じました。

彼の「たしかに右翼に投票はしたが、俺は右翼になったわけではない。左翼の主張が理想と違っていたから自分の考えに沿う主張に投票したら、それが右翼だっただけなんだ。納得のいかない左翼に投票するよりも左翼的だろう」といった主張に(女装は男性しかできないから最も男性的な行為である、みたいな話かな?)と思ってちょっと可笑しくもなりつつ、納得。

政治観を友人間でも家庭内でも積極的に話すというのは、フランスのお国柄だろうなと思います。


キックボード

つかささんのエプロン姿が素敵でした。

キックボードを使う彼女を嫌がりつつ、店休日前で閉店間近のお店に置き忘れた自分のスマホを(徒歩では閉店に間に合わないからと)キックボードで取りに行ってもらう彼の苦渋の表情が微笑ましかったです。

改めて考えると、徒歩でも數十分しか変わらないならお店に頼んでちょっと待ってもらえばいいのでは?と思わなくもない。そういう融通がきくかもしれない余地があるのは日本独特の文化なんだろうか。

それにしても、彼はなんでそんなにキックボードを嫌っているんだろう。小さい頃に子供用に乗っていた以来で、確かに最近は使っている人を全然見かけないけど。品がない(ように見える)から、とかかな。


代理母出産

彼の(と先妻との)息子とその男性パートナーの子を、彼女の(前夫との)娘の卵子を用いて彼女が代理母になり出産するのはどうか?と彼女が提案して彼が慌てる、という話。文章にするとややこしい!ここを整理するために家系図を書いたくらいです。

結局彼の夢オチではあったし彼女には年齢的に無理だと一蹴された訳ですが、実際どちらの言い分もわかってしまった。お金も少なく済む上により身内だと思えるという彼女の考え方も、妻が孫を出産するくらいなら費用を出すから第三者に頼んでくれと拒絶する彼の感情も。

日本ではまだまだ制約が多く現実的でないとはいえ、これは簡単に結論が出ないなと考えるきっかけになりました。


形成

整形の話。彼女が「私はリフティングはしてない」や「私がやっているのは整形じゃなくメンテナンス」と主張していて(いや第三者から見たら同じようなものだって!)とコメディではあったものの、当事者ではない引け目から笑いにくかった。素直に受け止めれば、彼女と友人は五十歩百歩(だけどそれを言っちゃおしまい)っていうのが笑いどころなんだろうけど。

 

幽霊、家族の秘密

順番が前後しますがここの感想はまとめます、数年前にトラブルがあって今後もう交流を持たないだろうとなった親戚のことを思い出しました。やっぱり大人になると居ないことにする親戚ってできるよなあと思った上で、その対象が父で事情を伏せたいのが母ともなると本当に辛いだろうと痛感します。

そこから最初の景につながって綺麗にオチがついたのが憎かった!思わず笑って、爽やかに観終えられました。

 

カーテンコール

千秋楽だったこともあって何度も出てきてくれて、たくさんお話を聞けて嬉しかった!

皆さんどちらに共感したでしょうか、と言われたときにはパッと出てこなかったけど、こうして感想を書いた上で改めて振り返ると話題ごとにどちらの立場にも立ちつつ若干「彼」寄りだったかなあと思います。

彼は彼女の自立した精神や芯の強さが好きだとして、彼女は彼のどこが好きなんでしょうね?と客席に問いかけられたとき(顔〜〜!!)になってしまった。彼に限らず、舞台上の2人を愛せたのは今江さんとつかささんのチャーミングさと愛嬌があったからこそだったと思います。

あとは男女逆転で見たことで男女それぞれの生々しさがなくてよかったのかもしれない。刀ステの「禺伝 矛盾源氏物語」で、元タカラジェンヌさんを中心に女性だけで演じられた源氏物語(を軸としたストーリー)を観たときを思い出しました。

終演後にプロデューサーさんから改めてご挨拶があり、新しい試みだった男女逆転がとても素敵な仕上がりになりましたと聞けて嬉しかったです。

→先日さっそく新たに俳優班・花組出身ペアが発表されました!それぞれが男女2役いずれも演じるということで、1公演の中で場面ごとに交代するのか上演回によって役替わりなのか気になっております。こちらも観たい!

松本幸大・瀬戸かずや「それを言っちゃお終い」で男女2役演じる(コメントあり) - ステージナタリー

トリコロールシアターの帰りは近くのアマンドに寄りました、穏やかな空間でした。

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ショップ情報 | 株式会社アマンド

 

上で言及した、そして瀬戸かずやさんも出演されていた作品の感想はこちらです。

フォアレーゼン兵庫尼崎公演 〜近松門左衛門〜 感想

2月11日に朗読劇フォアレーゼンの兵庫尼崎公演に行ってきました。初のフォアレーゼン。

出演は森川智之さん、田丸篤志さん、福原かつみさん、後から発表された喜山茂雄さんの4人。フォアレーゼン公式の先行でチケットを取り、福原さんのファン2人で連番してきた感想です。

 

会場 あましんアルカイックホール・オクト

前入りして宝塚も観たかったものの、前日が花組公演の初日だったのでチケットが取れず諦めました。

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宿を取っていた梅田から移動して、JRの尼崎駅からバスに乗って到着。

ここが会場のあましんアルカイックホールか〜と写真を撮ったけど、会場のアルカイックホール・オクトは更にひとつ奥の建物でした。(もしかして「奥」だからオクト?と気になって「オクト」の意味を調べてみたけど、ラテン語で8だということしかわからなかった)

開演前に阪神尼崎の駅前でお茶しましたが、駅前を軽く歩いた限りだとチェーン店しか見つからなかったのが若干の心残り。ちゃんと事前にリサーチしていれば土地ならではのお店があったのかも。

アクセス | ご利用案内 | 尼崎市総合文化センター

着いたら物販と合わせて、サイン入りの缶バッジが出るかも!という500円のガチャがあったので1回引きました。

入っていたのはフォアレーゼンの猫マーク入りのふせん。日常使いしています。

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立ち位置

当日開演してからわかった立ち位置は上手から森川さん、喜山さん、田丸さん、福原さんでした。

ベテランでキャストの記載順も先頭の森川さんは中央と思い込んでいたから驚いたけど、ナレーションも兼ねていたから上手というか端だったのかも。

 

本編の感想

近松門左衛門・日昌上人・淀屋/廣富・高田郡兵衛などの対話が、浄瑠璃の作品の言葉を交えながら織りなす、短編オムニバス。

近松が理想を見た尼崎。その土地に親友の息子であり、自分を浄瑠璃作家として返り咲かせた日昌の寺を建立するまでの出来事を語る。

https://x.com/vorlesen0217/status/1740341834336137316?s=20

綱吉将軍の時代、誘われるままに劇作家となり才能が開花した近松門左衛門と彼の作品に触れ交流を持つようになった僧の日昌が政の策略や「忠臣蔵」による動乱に翻弄され……というストーリーだった、はず。台本が手元にないので記憶で書きました。

 

森川さん

映画「怪盗クイーンはサーカスがお好き」と、オトナ♡プラネタリウムに出演していた印象が強い森川社長。世間一般での代表作はアニメのスラムダンクでの水戸洋平役なのかな?

席が上手側の前列で、かなりの至近距離で拝見したのでナレーションと役のときの表情の違いもよくわかりました。近松門左衛門を演じるときがらっと気弱そうな雰囲気になっていて、気の弱い役のイメージがなかったのもあり新鮮でした。

喜山さん

日昌僧侶が近松門左衛門をはじめ周囲に向ける思いや「自ら命を絶つというのは己が生を得るまでと得てからの多くの助けや繋がり、縁(えにし)といってよいものを無下にする傲慢」、「いくら才能があっても過激な創作で人心をいたずらに揺さぶるのはよろしくない」(※ものすごくニュアンス)といった言葉に素直に心打たれました。

それだけ心打たれたのも喜山さんの表現力あってのことだと感じています。淀屋の「ザ・悪いお役人」な演技も鮮やかで、トークパートで初めての朗読劇だったと聞いて驚きました。

田丸さん

田丸さんといえばアズール・アーシェングロット役のイメージ。理豊さん役が艶やかでした。

台本を持つ手元、指先がすらっとしつつも骨ばっていて綺麗だったのが印象的です。津田健次郎さんみたいにドラマ出演とかないですか?

福原さん

開演前の楽屋自撮りがHAPPYでした。和服が似合う!

劇中劇、それも近松門左衛門の過激な作風での女性役から荒々しい赤穂浪士の残党(でいいのかな)まで振れ幅が凄かった。観たかった引き出しの多さを体感できて満足です。

阿古屋やお初の役では、直近でリリースされていた遊女モチーフの演歌の収録経験が活きているんだろうな〜とファン目線から嬉しくもなりました。お初のか細い「殺して……!」がなんだかもう一周まわってあざとく感じて逆に腹立たしくもなったというか、日昌がいたずらに刺激的な表現は好かないと言っていたのはこういうことかと実感した気がします。

兼ね役で特に好きだったのは赤穂浪士の残党こと高田郡兵衛でした。これまで(個人的に触れた限りの他作品で)聞いたことがなかった力強い声色で。そしてラストにがっつり出てきて、想像していた以上にキーパーソンだった。

最後の最後、トークパートの捌け際にペンギンみたいなポーズをしていたのが可愛かったです。ペンギンというか、五関様のアクスタみたいだった。

 

トークパート

序盤に森川社長とまあまあしっかり視線が合った感じがして、若干気まずそうな表情をされていたような気がする+それ以降は気持ち下手方面へ視線を向けていたようだったのが申し訳なかったです。まるっと気のせいであってほしい。

皆さんがTシャツで出てきたとき、下手から上手にかけて段階的にボトムスのシルエットがタイトになっていっていたな。

あとはなんといっても短かったのが寂しい!もっと聞きたかったよ〜!森川社長の「ちちち、ちちち(鳥の鳴き声)」の話がちらっとでも聞けてよかったです。

 

おわりに

開演前にお手紙をボックスに入れましたが、終演後に誤りがあったことに気付いて帰り側に取り戻せるかな?と思って見たら既にボックスが空になっていた。回収が開演後なのか休憩中なのかは不明です。(誤りは、先日お渡しした次のお手紙で謝罪しました。)

演者さんが終始椅子に座っていての朗読劇というのは初めて観たので、プロの声優さんは立っていなくてもお腹から声が出るものなのかと驚きました。

改めて振り返ると、創作が多くの人の心を動かし作者までもがその才能に呑み込まれていった過程には「禺伝 矛盾源氏物語」にも通ずるものを感じます。あとはナレーションで世間に伏せられたと説明された出来事に対して、いわゆる陰謀論というのはこうして世に隠されたり脚色される過程で情報が錯綜して発生するんだろうかとも思ったり。

終演後のお写真、かしこまったVer.と社長撮影のリラックスしたVer.が見られて嬉しかった!ありがとうございました。

これを観て帰った翌日に両親と会い、お土産のりくろーおじさんを渡しつつ「近松門左衛門ゆかりの地で彼の半生についての朗読劇を観てきた」と推し活を若干盛って話したりもしました。アカデミックな題材で、実際に学びにもなってよかった。初フォアレーゼン、楽しかったです。

 

関連記事:感想で言及した他作品の感想

しまさんに短歌から短文を書いていただきました

短歌を精力的に作っているしまさんが「短歌からイメージをふくらませて短文を書く」という試みをやっていて、自作短歌からも選んで書いていただきました。

面白そう〜、と募集ポストにリアクションをしてから、1日も経たずに引用通知がありました。

人間ってややこしい。いやなことがあったら、腹が立ったら、悲しかったら、泣いてしまえばいいのに。涙を流すだけの機能を持っているのだから、それを活用したらいいのに。
それでも、泣きたいときにあえて泣かない、という選択肢をとる人間は少なくない。
赤ん坊や小さな子どもは、泣くことで思いを伝える。単純明快でいいじゃないかとおれなんかは思うけれど、話はそう単純なことではないらしい。
おれの受け持ちのなかには、そういう、泣きたいのに泣かない、という人間が多くいる。理性的といえば聞こえもいいが、見ているこちらからするとじれったいことこの上ない。
もう泣いてしまえよ、と声をかけてやりたくなったことが、今まで何度あったろう。それでも、直接人間に声をかけるのは御法度だ。ごくごくたまに、おれたちの声が聞こえてしまう人間も、いなくもないけど。あれはまあ、特殊なタイプで。
おれたちに出来るのは、受け持ちの人間を見守ること。人間の営みを見届けること。声はかけず、彼らの行く末をその運命に任せること。
そうしてもうひとつ。これは、おまけみたいなものなのだけれど。
棚にしまっておいたじょうろを取ってきて、なみなみと水で満たす。重たくなったそれを手に、おれは受け持ちの区画に向かう。
じょうろを下に傾けた。ざあざあと降りそそぐ雨滴に、うつむいていた彼や彼女の顔が上がる。驚いたような表情から、ああ、雨か、と納得したような顔にかわって、それからゆっくりと、目元や口元がくしゃくしゃに滲んでいく。ほら、これでいい。
泣きたくても泣けないのが人間であり、そうと決めた人間には何も手出しできないのがおれなのだとしたら。泣かないと決めた彼らには、してやれることなど何もないのだとしたら。
それでも、おれはおれなりに、きみらへ祝福を捧げるよ。
だから、なあ。せいぜい派手に濡れてくれ。

scrap

通知に気がついたときにいたのは、梅田で地下にある炉端焼き店でした。一緒にいた友人が席を外したタイミングで電波の悪さと戦いながら画像を読み込んで一読し、広く読まれてほしいと拡散。数時間後ホテルに戻り、落ち着いてお礼と感想をリプライしました。

短歌選びから文章まで、自分の短歌の特徴だと自覚している「(良くも悪くも)主体と対象の間に距離があって自己完結している」ところをそのまま残して良い方に振ってもらえたことがとても嬉しかったです。

一人ひとりの短歌に合わせて違っている画像の色づかいも、ピスタチオグリーンの文字色に柔らかい背景色と好みな要素が詰まっていました。

しまさんの持ち味をあたたかさや湿度、人間味があってリアルな心の動きをはっきり表現しているところだと感じているのですが、自作の雰囲気を残したままにしまさんの味もある作品にしてもらえたと感じています。

 

短歌は、好きなアイドルだった河合郁人さんがグループを去ると発表されたとき作ったものでした。

いつきさんが、最後を見届けるまで泣かないと決めていると言っていてぐっときました。私は9月の時点から何度か不意に涙目になっていたし、関係のないJ-POPの曲で意味もわからず涙目になっていたのに。

(中略)

大前提として泣いている人にも泣かない人にもそれぞれの思いがあり、序列がつくものではないんだけど。

50日後に自担がアイドルを辞めるファン(の1人の思い) - 震えてるのは君のほう

泣かないと決めた人に対してできることは何もないけど、雨を降らせて涙をごまかしてあげられたらいいのになあ。という思いからできた短歌です。

また文章からは昨年観た舞台「ウィングレス」での天使観を連想しました。見守っていた人間のひとりに恋したために自分も人間になって奔走する元・天使の話。模範的な同僚としてこういう天使もいたのかもしれないと楽しくなったし、短歌を作ったときこの舞台に影響を受けていたのかもと新しい発見もありました。

映像に残っていないので、原作小説を紹介します。

しまさんは映画「ベルリン・天使の詩」のイメージだったということでした。初めて聞いたので調べてみたところ、こちらも天使が人間に恋をするというあらすじだった!フィルマークスにClipしました。

 

他の方の短歌を元に書かれた短文は、しまさんのブログにまとめられた記事から読めます。同ブログ内に過去の作品や活動もまとめられているので、そちらもぜひ!

舞台「ウィングレス」の感想もどうぞ。

自担がアイドルを卒業して約1ヶ月後のいち河合担の思い

「○日後に自担がアイドルを卒業するファンの1人の思い」シリーズ、最終回です。これまで脱退の50日前30日前3日前と区切ってそれぞれの時点での心情を定点観測していました。

現在は河合郁人さんがA.B.C-Zを脱退してから1ヶ月と少し、脱退発表があってからはおよそ4ヶ月が経っています。

バラエティ内で脱退に触れられるのを見るのが辛いかもと不安に思っていたけど、意外とあっさり受け入れられました。変化といえば4人から届いた年賀状がふざけていなかったのと個人Youtubeの動画を見る習慣が増えたくらいで、良くも悪くも実感が曖昧な日々を過ごしています。

 

 

12/19昼,20夜 ABC座

ABC座の感想は前回も書きましたが、その後に行った公演の思い出について。観劇後のメモを元に振り返ります。

一般で取った平日昼のS席は、S席範囲内の2階最後列いちばん端でした。普段は外れだ〜と思うけど、このときばかりは通路席で嬉しかった!河合郁人さんのハイタッチは手がひやっとしていた。顔もしっかり見てくれていたのに、表情の記憶は曖昧です。笑

最初「よくわからない」が先に立っていた戸塚さんのソロパフォーマンスは、彼がこれまでに抱えた躊躇や後悔とそれらを克服してきた過程が伝わってくるようでした。それこそ最初はJr.のパフォーマンスかな?と思って中央に戸塚さんがいることにも気付けなかったくらいなので、その意味でも複数回取っておいてよかった。

これまで普通に好きだった曲の「雪が降る」にぐっときました。歌詞が一節ごとに状況とリンクしているような気がして。いつか数年後くらいに、それかもっと先でも「失った二人の日々 取り戻したいから君に もう一度恋をする」がしっくりくるような時があればいいなと思う。

「S.J.G.」では「いつまでも変わらずに」の歌詞が「お互い変わらずに」と変えられていて、それを歌うときの塚ちゃんがしっかりと河合くんを見つめていたのが印象深いです。このフレーズの間は2人の1対1の時間なんだなあと感じました。

あと塚ちゃんは19日昼の挨拶で「こういう形で河合を見送ることができて(ニュアンス)」と言っていて、お葬式みたいな言い方だけどこの場合は生前葬か、と考え込んでしまった。(このときのことを後に短歌にもしました。詳しくは2023年の自作振り返りに書いています)

挨拶といえば、20日夜のはっしーが体ごと河合くんに向き直って「戻りたくなりましたか!」と言ったところで涙腺がパーンと弾けたような気持ちがした。泣いて視界が滲むからと少しでも見逃したくない一心でこらえて、実際には涙腺が弾けたという例えが合うほどには泣かなかったんだけど。

 

公演期間に多くの方と会ってお話できたのも嬉しかったです。

以前短歌の合作(でいいのかな)をしたこともあるにうむさんと偶然隣だった公演もあって、写真は時間の都合で撮れなかったもののお互い驚きつつ喜びました。

人の顔を覚えるのが苦手なのを改めて実感し、会ったことがある方に先に気付いてもらったりすると申し訳なかった。ありがとうございました!

 

12/19 ぼくたちとみんなのラジオ

最後の出演回で、演技がいちばん好きだと発言していたのが印象に残りました。

今まで「舞台からフェードアウトしている感を受け入れてきたから歌って踊るのをやめるのも意外とそんなに辛くないかも」と強がってきたのについさっきのラジオで「目指すのはMCだけどいちばん好きなのは演技」と聞いて動揺したし私は何もわかっていなかったんだな、と思う
https://x.com/ps2310201/status/1737122939231936889?s=46&t=OOj59DAkBuNdSvAqAc-jxw

いちばん好きな仕事(表現)を質問されて演技と答えたのが2017年で、今も同じ気持ちだそうです。そういうことなんだったら見たい姿がたくさんあるよ〜!
https://x.com/ps2310201/status/1737126795512820217?s=46&t=OOj59DAkBuNdSvAqAc-jxw

該当の発言が公式アカウントの書き起こしに残らなかったので、こうして個人で残したものしか貼れないのが少し悔しい。

最後の出演回で花束をもらって「お疲れさまでした」と言われていたのがいかにも「古株メンバーの退職」感があって切なかったなあ。

脱退してからのラジオは寂しくてもう聞けなくなりそうと思っていたし実際に年が明けてからの数回は離れていたけど、先日1/24の回はNISAについて学べるということでリアルタイムで聞きました。勉強になった!

河合くんは元々ラジオ出演の頻度が比較的少なかったこともあり、3人でのトークも「いつも通り」感があって意外と寂しい感じはしなかった。

これからも気になったトピックのときには聞く距離感でいようと思います。

 

12月21日 夜

見納めたと納得してはいたものの当日の公演時間中はやはり落ち着かず、大千秋楽の公演時間中は買っていなかった分の写真とABC座のステージフォト、グッズをオンラインで選んでいました。

それらは現在もう届いているけどなんとなくそのままにしていて、写真を1枚ずつアルバムに入れたりグッズを飾ったりする境地に至っていない状態。

家で聞いていたのは最後の曲だった「また出会える日まで」でした。その後もときどき聞いています。

公演が終わった時間は一斉に出るだろうレポを見る勇気がなくてSNSから離れようとしていましたが、ABC座2023円盤化の知らせが嬉しくてすぐ予約とその報告をしました。あのとき明るくなれることがあってよかった。届いたらまた観るのが楽しみです。

 

かわいたちチャンネル 〜purple rain〜

個人のYoutubeチャンネル名の「かわいたち」を見たとき(前にテレビでかまいたちさんと「3人の番組をやれたらこの名前にしたい」って言ってたやつだ!)と思ったけど、かまいたちのお二人との動画でチャンネル名を報告していたとき特に誰もその話題を出していなかった。

あとサブタイトルの「purple rain」がこれ↓とは関係なかったのが少し寂しい。

そうは言いつつ、視線の先は違っていても結果がどこか交差しているような形が「ふみとつ」らしいのかもしれない。

火曜と金曜の投稿で、素直に嬉しいです。最近はまだ脱退直後のロケで撮られた動画が多くて、1人で活動を始めたことへの本音が出るとドキッとする。

 

おわりに

ここ数ヶ月、今まさに勢いがある方を応援している人々の目にも入るSNS上などで悲しさや寂しさを表すことに引け目を感じたときもありました。しかしそう見える中でも、人それぞれ様々な経験をしていることを実感した経験だったと感じています。

年末に会った幼馴染みは「(私の歴代の推しの中で)河合くんのファン歴長かったから心配だった」と言ってくれました。SNSを見ていなくて、私が他の趣味を楽しんでいるのを知らなかったから余計にだったのかもしれない。

少なくとも、今のところは覚悟していたよりは穏やかな心持ちです。年が明けてから観に行った舞台のダンスで目を惹かれた俳優さんの踊り方が、河合さんの踊りと似ていたような気がしたので、まだまだ未練もあるんだろうなと思いつつ。

本当はちゃんとファンレターを書いて直接届けた方がいいんだろうなあ。正直なところ昔書いてお手紙ボックスに入れた内容を思い返すと黒歴史で申し訳なくなるし、相手の手元に言葉が残るのが怖い。誕生日や記念日のタイミングでイラスト入りのカードにささやかな手書きメッセージを添えて出すくらいが精一杯ですが、動画やインスタライブへのコメント等とはまた別で応援を伝えたい気持ちが最近生まれています。

まだ現状これまでの日常の延長線上のように思えていますが、またA.B.C-Zの新譜が出たりコンサートツアーが始まったときにより強く脱退(ここまで脱退と書いてきたけど、戸塚さんの言葉を借りるなら「脱進」)を実感するのでしょう。

ひとまず今は、河合さんの夢であるMCレギュラー番組が実現できますようにというのが一番の思いです。あとは個人ファンクラブができたら嬉しいな。

 

関連記事

趣味で短歌を作っていて、2023年後半はA.B.C-Z関連が多かったです。

これまでの「○日後に自担がアイドルを卒業するファンの1人の思い」シリーズ

2024「朝彦と夜彦1987」A感想(平野良さん・村田充さん)

1月13日、今年の観劇始めに朗読劇「朝彦と夜彦1987」を観てきました。今作は初見で、中屋敷法仁さんの演出作品には何度か触れています。

Aのおふたりで見たくて、急な予定変更のおかげで彼らのラスト回に滑り込めました。「信長未満(ドラマ)」と「HELI-X 〜スパイラル・ラビリンス〜」以来の平野良さん。村田充さんはお名前だけ存じていて、見るのは今回初めてでした。

以下本編の内容に触れた感想です。

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夜彦が生きていてよかった!クライマックスまでの流れを経て、夜彦の30歳を祝えるハッピーエンドになるとは思わなかった。余白のあるラストだったというのは置いておいて、少なくともそう捉えられるように着地するとは。

中屋敷さん演出らしい、同性間の閉じた関係の重さ濃さをしっかり浴びた気がします。演劇ドラフトグランプリでの中屋敷さん作品なんかは一般向けに作られていたんだと実感しました。

 

平野良さんの朝彦さん、好きでした。特に「弟と妹がいる俺にとって手のかかるやつの世話を焼くというのはもはや人格の"核"」(ニュアンス)の台詞が胸に刺さって。さらにその10数年後に母校の教師になっていて2人(もうすぐ3人)の子持ちというのも、良い。

これまで観たことがなかった、平野さんの困ったような顔も新鮮でした。平野さんの朝彦だったからこそ、時代背景の違いも伴って品のない発言も多少あったのを上回る魅力を感じたのかなと思います。Aの回に行けてよかった。

 

そして夜彦を通して、親になることの難しさや覚悟を痛感しました。

自分自身も10代を経てきたとはいえ、年齢は夜彦父の没年の方が近いので、夜彦父もやむを得ない(それこそ作中であった夜彦の独白のような)思いがあっての決断とは想像がつく。しかしその決断が後々まで夜彦を傷つけている。

自分自身は一連の舞台上で表現されていたようなことをあえて避けて生きてきた自覚があるので、これからも逃げたままでいられるのかと突きつけられた気になりました。

そこまで考えて、村田充さんがかつて子供を望むか否かの相違で神田沙也加さんと離別していたことに思い至り。どのような思いでもって夜彦を演じたのかと苦しく、結局ここでも逃げて深くは想像できなかった。ただ全てのプロの役者である方々にとって、演技に私情が乗っているのではないかと捉えるのは失礼にあたるような気もしています。

高校から大学にかけて学生演劇に触れた際、たまたま続けて陰鬱な後味の作品に触れたことを差し引いても(自分の考えと沿わない言動や辛いと感じる状況を何度も演じることはきっと耐えられないだろう)と感じたことが制作を志さなかった大きな理由のひとつなので、その恐れを乗り越えて舞台の制作に関わっている方々を等しくリスペクトしています。

重い話にはなったものの、やはり2024年の初観劇で観てよかったと感じる作品でした。ありがとうございました!

 

中屋敷法仁さん演出作品の感想

平野良さん出演作の感想

テニミュ4th六角戦 イープラススペシャルデー感想

※今!?ですが、夏から下書きに寝かせたままだったので関東立海を観るのを機に公開します。

 

7月16日の夜公演、テニミュ4th青学vs六角のイープラススペシャルデーに行っていました。

暑くて人も多かったので早々に入場し、中でもらったQRコード入りのカードを撮っていた。

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前回の4th関東氷帝では先行抽選に外れてから先着で見切れを取っていましたが、今回は抽選で取れた+3階の少なくとも下手側はほぼ空席でした。

2階だとサイドの前方でもステージが全部見えることに感激。

 

序盤のなすべきこと〜それはテニスだろ〜から既にまあまあの尺だと感じたし舞台上の人数も多くて、情報量がすごかった。もうテニミュ4thはとにかく足し算で盛っていく方向性なんだと覚悟が決まった、というのが全体の感想です。

緑山戦もがっつりあって、氷帝リポートのあたりではこの後まだ六角戦の描写がまるっと控えているのかと気が遠くなりかけました。退屈とかではなくて、場面が多い上にひと場面ごとのボリュームもあって体感時間が長い!精神と時の部屋で上演している可能性がある。

 

手塚部長、というか山田さんの歌の迫力が凄かった。舞台上で一瞬、帝劇に立つ姿が被って見えました。

あとスーパー大石部長代理タイムで原さんの武器はコメディ力(りょく)というか歌と全身に感情を乗せることなんだなと実感。シアタークリエでコメディ作品に出ているところとか観てみたい!「She Loves Me」のアルパッド役とか合いそうだと思います。

 

今回で緑山への好感度が上がりました、特に季楽部長。作品を問わず作中で登場人物の成長を目の当たりにすると感動しやすいので、合理性をモットーとしていた彼が青学戦を通して熱い男になった流れにぐっときました。

東北ことばの彼が顔立ち女の子すぎてびっくりした〜…!双眼鏡で追ってしまった。

あと緑山の曲の曲調がかっこよかったです、ああいう曲調ってなんて言うんだろう。歌詞に「エコでクリーン(グリーンかも)なテニス」って出てきたのは、急にSDGsの標語もかくやの感じが出ていてちょっと面白かった。

全体を通してシーンごとに曲調がぽんぽん変わる楽しさがテニミュの醍醐味のひとつかもしれない。各曲のメロディと曲調のバラエティ感が好きです。

 

ここで飛んで、ラストの客席降りのときの話。

舞台に向けていた視線をふと正面に戻したら、不二先輩がこちらを見ているような見ていないような曖昧さで薄く微笑んでいた。持田さんの不二先輩が好きなのに、歩いてくる気配なんかを全く感じなかったのが不二先輩らしかった。

朝ドラの「あまちゃん」がやっていた時期に、NHKの何かの番組で「動物は視線の向きを敵に気取られると生き残れないから白目がほぼなくなった、だから能年玲奈さんの黒目がちな瞳に人はミステリアスさを感じて惹きつけられる」というような話があったのと繋がりました。

前々から持田さんというか2.5舞台の制作陣に対して(目の形が丸いのが特徴に見えるひとが不二周助と本橋依央利にキャスティングされたのが不思議。ビジュアルや演技との納得とは別で、そもそもの造形の種類が結構違わない?)と疑問を抱えていたのが、間近で見て解消した気がします。

黒目がちだから視線がわかりにくいところで(一般的につり目や糸目から連想されるイメージである)ミステリアスさを担保していてパーツの形の違いが補われているのかも!という感じ。実際のキャスティングの意図はともかく、個人的には発見でした。

一緒に観ていた夫(学生のときからテニプリを読んでいて、今も新テニをリアタイで追っているテニス経験者)は後で「女の子が来たかと思った」と言っていました。姉妹の影響なのか女性オタク寄りの感性を持ち合わせているところがあるので、時々こういう嘘みたいな発言をする。なので定期的にバズっている「(発言者の)推しコンテンツに疎い家族や第三者の理解ある/鋭い初見感想」の話題が盛っているように見えることがあっても、本当なんだろうと思っています。

 

前回分はこちら!関東立海も楽しみます。

自選10短歌集2023 振り返りと解説

企画「自選10短歌集2023」に参加しました。皆さんの自選ページが並ぶ中で、No.41に掲載いただいています。

【好きなものと短歌と過ごした一年。】 #自選10短歌集2023|鷹野

昨年は9月21日に自担だった河合郁人さんのグループ脱退発表があり、3ヶ月後12月21日の脱退で締め括られました。現在も引き続き同じ事務所でタレント活動を続けているとはいえ、ファンとしても慌ただしかった年でした。

 

10選と並び替え

昨年分は作ったものをひと通り見直して10選を考えたのに対して、今回は印象に残っていた自作をざっと挙げた時点でほぼ10首でした。それらを初出からコピーして作成時期の順に並べ、次に並び順を検討しています。

前半に作ったものなどいくつかは忘れている可能性もあると思いつつ、自分の記憶に残っていないものが急に年間の自選に上がることもないだろうと深追いをやめました。

 

色と字体

文字色は洋色大辞典からグレープ #56256e を選んでいます。(応募フォーム内に「和色大辞典」のリンクもありました)河合さんのメンバーカラーの紫です。

字体は明朝体と迷った上で丸ゴシック体にしました。丸ゴシックの柔らかさが好き。

文字色と字体のおまかせもできるのでお願いしてみたくはあるものの、決める過程が楽しくてつい選んでしまう。

 

それぞれの短歌

自選とした10首について、背景など書きます。

ロケバス内ハンディカメラの画質でも つやつやの頬 きみは光源(アイドル)

『きみはアイドル』という結句で皆さんが詠まれてたの、あれのアイドルの箇所を思い思いに漢字に変換したやつ集めたい

https://x.com/suoak_aynou/status/1688137773038112768?s=20

上記をきっかけに作った短歌です。

A.B.C-Zの番組で一時期よくあった、グループでの移動中にメンバーが手持ちカメラで撮っていた映像。機材や照明がベストではなくても河合くんの肌はピカピカだったなあと思い浮かべていました。

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迷わず先頭にしたものの、自選10短歌集2022に参加したとき1首目の上の句が「ノンカロリーのガムシロップを飲み干して」だったから2年連続でカタカナが多めになってしまっていた。編集の際にはお手数をおかけしました。

 

バーチャルで生きていたいよ剃刀を滑らすことも泣くこともなく

粘菌歌会の第63回 テーマ「手」に投稿した、夏頃に作った短歌です。

剃刀で指の産毛を剃っていたらうっかり手が滑って皮膚に血がにじんでしまったときのことから着想しました。バーチャルの存在だったらこういう地味に嫌なこともなくて、それなら涙も出ないんだろうな、と。

ちいかわで主要キャラクターたちが「なんとかバニア」に変えられてしまったときの台詞「泣いても涙がでないや」にも少し影響を受けているかもしれない。

粘菌歌会には何度か送っているものの、未だ入選には至らず。今年もできるだけ投稿できればと思います。

 

「一緒に行く?地獄」と笑ったあなたから視線を逸らし未(ま)だここにいる

杏湯さんの企画「地獄めぐりの旅」に触発されて「地獄」を題材に作り、提出しました。

かぎ括弧の中は、戸塚祥太さんが2018年3月13日のラジオで発言したことです。
私がA.B.C-Zのファンになったのは2018年の8月なので実際に聞いたわけではないのですが、ファンの間で定期的に話題に出ていて知っていました。もはや伝説。
(中略)
地獄へ一緒に行こうとまで笑って言ってくれる人がいても、目を逸らして立ち止まってしまった。差し出された手を取らずに残ったここだって別にそれほどいい場所じゃないけど、なんとかやっていこうと思う。そんな思いで作った短歌でした。

短歌企画「地獄めぐりの旅」に参加しました - 震えてるのは君のほう

 

理想ってなんだと思う?箱庭の外で実った苺が落ちる

アキタさんとテーマをひとつずつ出し合って短歌を作った際の1首。

私が出した「理想」とアキタさんからのテーマ「箱」の両方を入れ込んでいます。

「理想ってなんだと思う?」は戸塚祥太さんのソロ曲「星が光っていると思っていた」にあるフレーズ「才能ってなんだと思う?」から取っています。
作っていたとき苺のチョコを食べていたから、箱庭と苺のイメージが浮かびました。理想→楽園の連想で「りんご」でもいいかな?と思ったものの、柔らかさと水気と生々しさを「箱庭」の静けさと対称にしたかったので苺に戻したという経緯です。

アイドル短歌で、自分の出したテーマも作る相互題詠をやってみました - 震えてるのは君のほう

 

愛なんだ どこまでも巡る日常も がんばれるのは好きがあるから

昨年10月に公開されたアイドル短歌アンソロジー「アイドルが好き」に寄せて作りました。こちらのアンソロも、自選10短歌集と同じく鷹野さんの主催です。

公募されていたテーマ「アイドル」に沿いつつ、アンソロ題名の折句としています。

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V6さんの「愛なんだ」は昨年行った披露宴のケーキカットでも流した曲だったため、個人的な思い入れも含めています。
ありふれたファンの気持ち短歌かと思いきや実は折句、というものになり、気付いた方からお褒めの言葉をいただけて感激でした。
折句などの仕掛け要素を含みつつ、それを抜きにしても人の心を掴めるようなエモーショナルな短歌を作ることが今後の目標です。
アイドル短歌アンソロジー『アイドルが好き』に参加しました - 震えてるのは君のほう

 

本当は前髪が○○ほうが好き だけど今年のうちわも最高

碓氷さんの企画「上×下」第4回へ参加したときにテーマ「秘密」で作りました。

参加者それぞれで上の句をひとつずつ作り、皆の上の句に下の句を続けるという企画です。

自選には、提出していた上の句に自分で下の句を続けた短歌(企画内には未掲載)を入れました。

テーマが「秘密」であること、また複数の方が下の句を続けることを踏まえて伏せ字を使ってみました。個人的には前髪がない方が好き。

 

俺たちとみんなにそれぞれの人生 おかえりを言う さよならがある

第5回A.B.C-Z歌会「A.B.C-Z」に投稿した短歌です。

A.B.C-Zとそのファンにとって、2023年は「塚田さん休養→塚田さん復帰→河合さん脱退発表→河合さん脱退」と激動の年でした。

復帰と脱退発表が立て続けにあった時期に作ったので、おかえりは明確に「言う」さよならは曖昧に「ある」としています。

上の句はグループ定番のフレーズ「俺たちとみんなでA.B.C-Z」から。2019年のコンサートSPOT映像のラストにその様子が入っています。

 

泣かないと決めた人らを見守ってときには雨も降らせる仕事

脱退発表の1ヶ月後にあった河合さんの誕生日に、ファン歴の長い河合担の相互さんと会って話しました。

そのときに「脱退するまでは泣かないと決めている」といった旨の話を聞き、見守りたいなと自然に浮かんだ短歌です。

泣かないと決めた人が涙をこぼしてしまったときには雨を降らせてごまかす、のイメージでした。

 

生前葬が終わる やがて地続きで余生と来世のあいだ漂う

ABC座の公演期間ラスト近くだった12/19昼公演で塚ちゃんの挨拶を聞き、その中での「こうして河合を見送ることができて(ニュアンス)」になんだか生前葬みたいだと思ったことから作りました。

脱退したあと自分はどうするんだろうと漠然と不安に思っていたので。

普段は意識して使わないようにしている生き死にまわりの強い単語を1首内に目一杯入れています。

 

胸をさすトゲは消えない夜だけど 恋わずらいの顔してくれる

さすがに10首の最後が生前葬というのもな〜と3月に作っていた短歌をラストに持ってきました。

それなりに前向きに締められたし、時期が違うにしては連続性をもって着地できたと思います。

JUDY AND MARY「そばかす」のCメロの歌詞「胸をさすトゲは消えないけど カエルちゃんもウサギちゃんも笑ってくれるの」から取りました。

 

2023年の自選5首

ハッシュタグ#2023年の自選五首を呟く」にも投稿しました。基本的には10首を自選した中から選んでいます。

このときの画像は明朝体で作りました。

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先頭だけは自選10短歌集への提出から泣く泣く外したものです。アキタさんとの相互題詠で作ったうちの1首で、ルビがないと読みにくかったので外して自作画像に入れました。

 

フリースペース

画像に入れていただいた内容を、改行を入れて転記します。

1首目の結句「きみは光源」は「きみはアイドル」と読みます。

2023年は「布武せいら」名義で歌会へ投稿を始めた年で、アンソロジー「アイと短歌」に参加した年でもあり、自担こと河合郁人さんがアイドルを卒業した年でもありました。

アイドルの彼を2018年の夏から5年と少し応援していて、幸せでした。ありがとうございました!!

締めの言葉は、ABC座2023の金テープに書かれていたメッセージから取りました。

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帝劇ではエンドロールの最後に5人それぞれのメッセージが座組全員の集合写真と重なっていて、過去形が胸にぐさっときた言葉です。

また2022分のフリースペースで名前を出した方について今回は触れていないのですが、変わらずファンを続けています!2023年はその人周辺の短歌を作らなかったので、フリースペースの文字数との兼ね合いもあり省きました。

 

おわりに

目次を見て、名前に複数名義を併記する手があったか〜!と思いました。次回も参加できれば、その際には併記したいです。気が早い。

アイドル短歌が短歌への入り口だった中で対象としていた人がアイドルを辞めたため、これからどう短歌と向き合うのか考えています。

2024年は気になった賞や歌会、企画へ投じたい。選ばれた作品が載る場で言及されるものを作ること、そして続けることが目標です。

 

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